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第5話 紙幣を大量に発行するとインフレが起こるのか?

前回の記事で貨幣の流通量が増えるとインフレが発生する、という歴史が世界規模で起こっていることを書いたが、ここではインフレについて理解するために、まず、一つ思考実験をしてみることにした。イメージは紙幣をいくらでも発行する権利のある中世の国王の治める国だ。

1. 国王は紙幣を大量に印刷し、発行した紙幣を金庫にしまった
2. 国王は発行した紙幣であるお店のケーキを買った。
3. 国王がケーキを買い占めるので、ケーキが品薄になりケーキの値段が上がった

上の事例を考えてみたとき、1の段階でインフレは起こりえない。紙幣を刷っただけではインフレにはならない。2の段階ではどうか?2の段階でもインフレにはならないだろう。発行したお金を使っただけで、インフレになるわけではない。一個ケーキが売れたからと言って、すぐに値段はあがらないだろう。インフレが発生するのは3の段階である。

この思考実験でわかることは、お金は刷っただけでインフレにはならず、需要が供給を上回った段階(品薄が発生)ではじめてインフレになるということだ。少なくとも「需要が供給以上にあるはず」とケーキ屋の店主が錯覚するだけの材料がなければインフレ(値上げ)にはなりえない。

こう文章に書くと凄く当たり前なのだが、私は紙幣を大量に発行すればインフレになると思っていた。実は需要が喚起されなければ、いくら国債を発行してもインフレになどならない。この立場に立ってあらためて過去のインフレの歴史を見てみると、政府(国王)が供給を独占する目的で紙幣を発行していたケースが多いことが分かる(多くは戦争のために資源を調達しようとしているケースである)。

ここは非常に重要なポイントで、政府の財政出動についても、供給能力を超える範囲で実施しなければインフレが発生することはないのである。テクノロジーが急速に進歩し、人類の生産能力や供給能力は伸びている。供給能力が伸びる限り、政府は財政出動を増やせるのである。



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