『職業遍歴』#25-4 一人暮らしの派遣社員が仕事を探す条件
筆者が過去に経験した「履歴書には書けない仕事(バイト含む)」を振り返るシリーズ第25弾。今回は、国際協力をしている官公庁で広報誌と社内報の編集アシスタントをしていたころのお話です。
25. 広報誌と社内報の編集アシスタント
私は国際協力をしている官公庁「J」の編集アシスタントとして日々楽しく仕事をしていましたが、2年ほど経ったとき辞める決心をしました。
前にも書きましたが、Jでの派遣の仕事の時給は1600円、実働時間は一日7時間で、残業はありませんでした。つまり月20日勤務の場合は、
1600円 × 7時間 × 20日 = 224,000円
ここから保険料や厚生年金や通勤交通費などで50000円程度引かれます(当時は派遣の交通費は自腹でした)。そうなると手取り額はたったの174,000円です。ゴールデンウィークのある5月や年末年始休暇のある12月や1月、それに2月は稼働日が少ないですから、これよりさらに低い手取り額になります。
派遣の仕事がどれだけ安いか、おわかりになりますでしょうか。世間的には派遣社員は高給取りだと思われているようですが、じつは派遣社員の多くは結構安い給料で働かされています。
前にも書いたとおり、私には当時一緒に住んでいる人がいたため、当初はその収入でもなんら問題はありませんでした。ところがその人と別れて同居を解消し一人暮らしをすることになりました。一人暮らしはお金がかかります。Jでの給料ではやっていけなくなったので、もっと割のいい仕事を探そうと考えました。
仕事を探すにあたってまずやったのは、自分が毎月最低どのくらいのお金が必要なのかを把握することでした。
私の場合、家賃が8万円、光熱費や通信費や食費などでだいたい月10万円かかります。それに飲み会代とか芝居のチケット代などのレジャー費も2~3万くらいは確保したいですから、そうなると最低で月20万円が必要になります。手取り20万ということは、額面で25万円以上稼ぐ必要があります。
25万円以上稼ぐには、実働時間が7時間だった場合、時給1800円以上の案件じゃないと無理です。実働時間が8時間あれば、時給1600円でもOKです。そう、時給だけではなく、派遣労働においては「実働時間」が大きな問題になります。なぜなら派遣の場合、「7時間勤務」の案件が多いうえ、残業もあまりない場合が多いからです。
私は仕事内容よりもそうした条件面に目を光らせて求人を探しました。仕事内容にこだわっていると、自分の希望する条件のものは少ないです。逆に、そんなに希望する仕事内容じゃなくても、今の自分のスキルでできそうな内容で条件が合っていれば、応募していました。
そして私は、時給1800円で実働時間が7.5時間という好条件の案件を見つけました。大手IT企業のグループ会社で、社内報の編集スタッフを募集しているとのこと。その案件は紹介予定派遣でした。
派遣会社の社内選考に通り、先方の書類審査も通り、私は顔合わせに行くことになりました。過去の成果物をいくつか持っていき、自分の仕事ぶりをアピールしました。私は直近のJで社内報の編集をしていましたし、その企業は紙媒体もWeb媒体も両方できる人を探していたらしく、私の採用が決まりました。
こうして私はJを辞めました。広報誌と社内報の担当職員たちは、とても残念がっていました。でも何人かで送別会をしていただき、温かく送り出していただきました。
辞めてすぐミャンマーに旅行に行きました。会社勤めをしている間はなかなか長期の休みがとれませんから、私はこうして派遣の仕事の合間にあちこち海外旅行に行っていました。
そして4月から、その大手IT企業のグループ会社での勤務がはじまりました。
そのとき私はまだ知りませんでした。「紹介予定派遣」の罠というものを。