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鶴見済『人間関係を半分降りる』感想

鶴見済『人間関係を半分降りる』を一気に読んだ。非常に面白く、自分が今考えているようなことも書かれてあり、読んでて何度も「そうそう!」と膝を打った。

今ある結婚制度とか教育制度というのは明治時代にできたもの。当時はそれによって日本が栄えたのだけど、今となっては時代遅れな制度でしかない。今は、みんなが一斉に学校に登校したり、定年まで一つの会社に勤めたり、みんなが恋愛をして結婚して子供を持ったりする時代ではない。それなのに法律がアップデートされてないから、不具合が起きている。

日本は明治以降急激に人口が増え、経済も発展し、国が繁栄した。が、増えすぎた人口は調整しないといけない。年寄りがなかなか死なずに子供がばんばん生まれていたら、人口が増えて大変なことになる。「少子化」「人口減少」が問題となっているが、それはむしろ必要なことなのだ。欧米もそうだが、人口がピークに達した国は、徐々に人口が減り始め、それに伴い結婚率も下がっているという。つまり、結婚していない、子供もいない人が、「少子化」だからといわれのない罪悪感を覚える必要などまったくないということだ。むしろその人たちは、必要なことをしている。子供を産む人だけでなく、産まない人も貴重な存在なのだ。生物界全体で考えても、個体数がいっぱいになれば、子供を産まないのもまた生き物の習性なのだという。子供を作らない人はむしろ、今の日本において正しいことをしているのかもしれない。

鶴見氏も「子供がかわいいと思えない」とはっきり書いているが、私もまったく同意見だ。子供はかわいくないし、自分に子供がいなくてよかったと心底思っている。もちろん、子供が好きで欲しいという人を否定しているわけではないが、この国は「子供はかわいいもの」「子供こそ幸せ」という刷り込みが強すぎるのではないだろうか?鶴見氏も、「父親としてやらなければいけないたくさんのことの代わりに、自分はこの人生で、本当に心からやりたいことをしたい」と書いている。同意見だ。私は母親として生きたくなんかない。自分のためにだけ生きたい。いいではないか。なんでそれがおかしなことと思われているのだろう。

子供がいらないとなったら、結婚だってしなくていい。「結婚」や「恋愛」の圧もまた、明治時代からの刷り込みなのだ。人は結婚なんてしなくていいし、恋愛やセックスだってしたい人だけがすればいい。私はシングルだからよく飲み屋とかに行くと「早くいい人ができるといいね」とか当たり前のように言われるけど、「恋人がいる」ほうが「恋人がいない」より上、なんてことはない。鶴見氏も、「自分はいつまでもフラフラしていたい。フラフラしたままで、豊かで幸せになりたい」と書いている。そうそう、「身を固める」必要なんてないのだ。一生フラフラしてたっていいではないか。

この本は鶴見氏の意見が書いてあるばかりでなく、資料となった本からのデータも紹介されている。そのなかの一つに、「女性の18%がセックスのときに痛みを感じている」というのがあり、ショックを受けた。18%。すごい数字だ。ほぼ5人に1人じゃないか。そんなに多くの女性が、セックスのときに痛みを覚えながらも、パートナーに求められてセックスをしているのかと思うと心が痛んだ。セックスなど、自分が嫌だったら断ればいい。それを拒む恋人など、願い下げだ。

ほかにも友人や家族との関わり方、SNSでの関わり方などの人間関係の問題のほか、「こうすれば気楽になれる」という章もあり、参考になった。

この本には鶴見氏自身の体験も書かれてある。恐らくはあまり公にしたくなかったことだろう。それをあえて書くことで、内容に説得力を持たせている。

「人間は醜い。だから少し離れてつながろう」というテーマには大賛成だ。私は、「人は一人では生きていけない」とかいう言葉が嫌いだ。人はむしろ、他者と近すぎて苦しくなっている。家族、恋人、友人。本当にその距離感が必要なのか?と今一度考え直してもいいだろう。友人との付き合いについて、鶴見氏は、「思っていることはむしろ、相手に伝えてはいけない」と言う。いい距離を保つためにはそれが正解だと思う。一般に言われる「友人だから本音を言わなきゃいけない」というのは大嘘だ。

一般的に信じられていること(「恋愛や結婚や子供は幸せ」とか「友達の数は多いほうがいい」とか「家族が一番大事」とか)が、いかに薄っぺらく、意味がないか、改めて考えさせられる。そうしたい人はそうすればいいだけの話であって、私は恋愛や結婚や子供はおろか、友人すらそんなには必要ない。普通の人のように、友人がいっぱいいてスマホにばんばん通知がくる、という状況になったら、私は疲れ果ててしまうだろう。

人はそれぞれ違う。大事なのは、自分軸で生きていくこと。人に委ねないこと。人間は一人でも、意外と楽しく生きていける。

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