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マダム・ロマランは、太陽が真上に来てもベッドから起き上がれませんでした。十二月だというのに暖かい日が続いていました。つい先日は夏のように気温が上がり、窓辺にあった鉢植えのローズマリーがオーブン焼きのように黒焦げになってとうとう枯れてしまいました。これはマダム・ロマランが海辺の街を出る時にひと枝持ってきたものを挿木して育てたものでした。このモーヴ街に来て新しい暮らしを始めてからというもの楽しく充実した日々を送っていたマダム・ロマランでしたが、ここのところなぜか過去のことを思い出すことが増え、気持ちが塞いでいました。過去の嫌な出来事の数々、楽しいことも沢山あった筈なのに全く思い出すことができず、それらの全てを放り出してここへ来たことも果たして良いことだったのか分からなくなり、全てが真っ黒に包まれました。
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自分の過去からここへの道を知ってくれているかのようなローズマリーの鉢植えが側にあることは、心強くもありました。そんなローズマリーが真っ黒焦げに枯れてしまったのを眺めていると、まるで自分の過去が振り返ってはならぬ真っ黒い闇のように思えてくるのでした。
リーン
ドアのベルが鳴る音がしました。マダム・ロマランは顔を上げましたがとても起き上がることはできず、枕に深く顔を埋めました。
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それからどのくらい時が経ったのでしょう。いつの間にか眠りに落ちていたようで、目覚めると窓の外は暗くなっていました。
ギュルー
マダム・ロマランのお腹の音が暗くなった部屋に響きました。
「残念ながらどんな時にもお腹は空くものね・・・」
仕方なくベッドから起き上がり、階下へ降りることにしました。
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外の食糧小屋に冷えたミルクを取りに行こうとドアを開けると、玄関の前に箱がありました。先程の訪問客が置いていったもののようです。箱の上には小さなカードがありました。
ーMerry X’masー
少し右上に傾いた特徴ある文字は、向かいのマドモワゼル・イリスのものだとすぐに分かりました。中には青いガラスや菫色の陶器で出来た綺麗なオーナメントがいくつも入っていました。マダム・ロマランの気持ちは一気に明るくなりました。
((単純な思考回路は時に救いをもたらすものです。))
そうでした、今日はクリスマス・イヴです。マダム・ロマランの黒いクリスマスに突然綺麗な色の明かりが灯ったようでした。黒はしばしば綺麗な色を引き立たせるものですから、人生には必要な要素なのかもしれません。
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鉢植えのローズマリーは枯れてしまいましたが、玄関の横の土に挿木したローズマリーはこの土地にしっかりと根を張り、力強く伸びていました。
ーそうよ、私はこの土地で新しい人生を始めたのだったわ。
ギュルー
「まずは何か食べようかしら!」
どんな時でもお腹は空くのです。マダム・ロマランは簡素ながらクリスマス・ディナーの準備を始めました。
マダム・ロマランの黒いクリスマスに添えられた新しいオーナメントが輝きながら揺れていました。まるで未来を照らす小さな小さな光のように。
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これは2024年の12月にマダム・ロマランが自身と向き合いながら描いたという自画像です。
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最近覚えた水彩画で描いたようですが、本人は能天気な性質に対して自身のことを少し影のあるクールな人物のように思っているのかもしれません。自己認識というものはしばしば歪むものです。どうか温かい目で……
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ところでマダム・ロマランは絵を描くことによって、黒とは一色でなく様々な色から出来ていることを知ったようです。黒は人生の豊かさ、とでもいうべきかもしれません。
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フランスガム|イラストレーター →HP
小林晃(aki kobayashi)という名前で雑誌や書籍、広告などの媒体で活動しています。フランスガムという名の元に、展示や様々な創作活動を行っています。
あなたのすごく近くにあるかもしれないし遠くにあるかもしれない、どこにもないかもしれないしどこかにあるかもしれない世界、を創作しています。
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【通販期間】
12月22日(日)21時~12月24日(火)21時
【BASE10%OFFクーポン利用可能】
→諸条件あり
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作家名|フランスガム
作品名|黒のノエル
アクリルガッシュ・紙・珈琲染め
作品サイズ|12.8cm×8.6cm
額込みサイズ|17cm×12.8cm
制作年|2024年(新作)
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作家名|フランスガム
作品名|マダム・ロマランの肖像
水彩・紙・珈琲染め
作品サイズ|8cm×6cm
額込みサイズ|16.5cm×14cm
制作年|2024年(新作)
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