浮気をされても、可愛い私のままでいたい。
浮気についてこんなに考えてしまうのは、
もちろん好きな人が浮気者だったからだ。
当時付き合っていた彼は、しょっ中浮気をした。でも、それでも私は彼が好きだった。
『浮気は許してもいい』というのは、
浮気は男の甲斐だ、浮気くらいで騒がずどしんと構えていなさい、とかそうゆう昭和のいい女的な話しではない。
私だって愛する人が浮気者じゃないに越したことはないと思ってる。ただ、どうしても別れたくないと思う好きな人が浮気をした場合、少しでもその人と長く一緒に居る為に、
『浮気は許してもいい』と私は思う。
浮気をされたら悲しい。
浮気をされた事がある人は、この悲しさを嫌というほど知っている。
世界が色を失う瞬間。
時は止まり、昨日までの私はまるで、インスタグラムのフォオワー 20万人のあの子の様に遠く感じる。
昨日までの甘いメールのやり取りは、この悲しみを倍増させる。すべては彼の演技だったように感じる。メールのやり取りをしていた彼は本当に浮気をしたのだろうか?
こんな事が現実に起こるなんて信じられない。でも、目の前にはどんな言い訳も通用しない証拠がある。
現実を受け入れた瞬間、こっち側からあっち側に線を飛び超えてしまった感覚。
でも、ボーっと悲しみに浸る事は許されない。
現実を受け入れた瞬間に、私たちは決めなければいけない。別れるのか、このまま彼を愛し続けるのか。このまま愛し続けるにしても、証拠を突き付けて怒り狂うのか、何も言わずこの部屋を去って彼に自分で気づかせるのか。選択肢は無限にさえ感じた。
私には、別れる、という選択肢はなかった。
彼のことを大好きだったからだ。あと、そもそも私も浮気相手で、最近彼は彼女と別れて、私が彼女になったばかりだった。自業自得で、自分がしたことが返ってきただけのことだったからだ。こんな事で騒げない事は分かっていた。
別れないという選択をしたものの、気がつかない振りをするなんて、とても出来なかった。私は、別れない前提で証拠を突きつけ、中途半端に怒り、中途半端に泣き、責めたり諭したり、自分でも何がしたいのか分からず、中途半端に爆発させた感情を彼にぶつける、という道を選んだ。
今思えば、1番最悪な方法だったな、と思う。
お互いに消耗した上に、明日への明るい希望も特に見つからない。
昨日までの2人の未来はあんなにワクワクしていたのに。
だけどお互いに愛情はあるので、これから先どうなるかは分からないけど、とりあえず様子を見よう、、、みたいに少し投げやり気味に話し合いは収束する事になる。
私は一応浮気を「許した」ということになっていたけど、それはただ「別れなかった」というだけで、実際には全然許していなかった。許してもいないのに、彼のそばに居たかったから許している振りをした。彼に対しても自分に対しても嘘をついていた。
そうして私は、昨日までの自分に戻ることが出来なくなってしまった。
私は昨日まで、とても可愛かった。彼の前で可愛く振る舞っていた、と思う。
向かい合わせで座ったランチのテーブルで、必要以上に長く見つめたし、彼がゲームに熱中している間は足の方でもいいからと、ピッタリくっついて本を読んだ。だけどもう、彼からのメールを開いても、微笑むことすら出来ない。長く見つめて、愛している、と伝えることなんて出来ない。だって彼は昨日他の女を抱きしめたのだから。その事を私は知ってしまったし、私が知っていることを彼も知っている。私たちは「彼が昨日私以外の女を抱きしめた」という事実を生々しく共有してしまったのだ。
浮気を共有してしまうことは、2人にとってメリットはゼロだった。浮気を共有してしまえば、当然気まずくなる。
いつもの会話はぎこちなく、避けなければならないワードが増える。
何気ない会話でも、彼は自分が疑われているんじゃないかと感じ、
疑われない様にしている彼に対して、私はより不信感を募らせる。
こんなことをずっと続けるの?
もちろん、時間が解決してくれる場合もあると思う。人には様々なケースがあって、どんな方法が上手くいくかは人それぞれ違うんだと思う。
でも、私の場合はとても辛かった。
もしも、浮気を共有せずに気がつかないふりをしていたら。
少なくとも、彼だけは昨日までの二人の続きを過ごす事が出来る。
私は、彼の目には昨日と同じに映る。
それはものすごく大事な事の様に思う。
なぜなら、私はたぶん、昨日までの可愛い私のままで居られるから。彼は浮気をしている。でも私がそれを知っていることを知らない。彼は昨日の私を見て、昨日の私に話し掛ける。本当はもう昨日の私ではないんだけど、笑。でも演じることは出来るだろう。
そうしているうちに、彼の私への愛も、それはそれで本当なんだろうと、気がつく。
私は演技をしているうちに、本当に昨日の自分に戻れるような気がする。
もしも愛する人が浮気をしたら、次は気がつかない振りをしたいと思う。