田丸楡

BL小説書きです。紙の本になるのを目指して毎日3000文字書き続けています。 エブリスタでは20作品投稿しています。そのうち2作品特集選出。フォロワー150人を超えました! エンガブが好き。 https://estar.jp/users/310914264

田丸楡

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ブラック、グレー、いつかはブルー 1

〜社畜は鬱になって、生き直すことを決めました〜 プロローグ 仕事を辞めた。 30年働いた会社をやめた。 企業といっても、とても小さな会社だったが、歴史は古い。そして小さくてもきちんとブラックだった。 若い頃は平気だった。 カリスマ性のある社長は、未熟な私には輝いて見えて、彼の言うことは全て正解だと思えた。 先輩も後輩も、みんな同じ方を向いていたから、私もそっちを向いていた。 嫌じゃなかった。むしろ心地よかった。 でも、そのちょっと宗教的に崇拝する社員たちの中

    • ブラック、グレー、いつかはブルー 10

      〜社畜は鬱になって生き直すことに決めました〜 9話から何と4ヶ月が過ぎていた。自分の人生をなぞることがこんなに辛いとは思わなかった。 やっと今、続きを書けるようになったのは、やはり時間薬のおかげ。この薬は失恋以外にも効くらしい。 仕事を辞めた私は、鬱が加速した。 昼夜逆転。無気力。罪悪感。自己嫌悪。世の中の人が一仕事終えてそろそろ終業、という頃に目覚め、朝日が登る頃に眠る。トイレに起きる以外は、ベッドの上か、テレビの前で全く頭に入ってこない番組を膝を抱えて見るか。多分

      • ブラック、グレー、いつかはブルー 9

        〜社畜は鬱になって、生き直すことを決めました〜 さて、グレーに、それもかなり濃い目のグレーに染まっていた私は、病気発症から辞めるまでの10年間の間、はたらきかたを変えつつも、やはり毎日ちゃんと仕事に精を出していた。 濃い目のグレーなものだから、当時はよく「社長に似ている」と言われていた。 ものすごく嫌だったが、最も社長の近くではたらいていた私は、いつしか彼と同じようにしか物事を考えられなくなっていた。 相変わらず仕事の量は多かった。退院して数ヶ月は腫れ物を扱うようだった

        • ブラック、グレー、いつかはブルー 8

          〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 さてここまで、私の経験を書き綴ってきたのだが、ここらで少し、はたらきかたについて触れよう。 10年ひとむかし、と言うが、本当に10年でずいぶんとはたらきかたは変わったと思う。 私はYouTubeを見るのが好きだが、YouTuberという 仕事が確立したのも、ここ10年ほどだろう。 昔はいわゆる「ちゃんとした」仕事だけが認められていたが、今は新しい職種がたくさんある。 今現在、はたらきはじめた、またははたらいて1.2年の人た

        • 固定された記事

        ブラック、グレー、いつかはブルー 1

          ブラック、グレー、いつかはブルー 7

          〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 「発見が遅かったら危険でしたよ。入院ですね」 病院で言われた台詞がうまく頭に入ってこなかった。 ええと、ということは、まず社長に言って引き継ぎを・・・いや、その前にこんなこと、信じてもらえるだろうか?私の頭の中では早速シュミレーションが始まった。 当時私の周りでは、私ぐらいの年代で「脳梗塞(の前触れ)」を発症している人は少なかった。その後、芸能人が若くして発作を起こし入院したというニュースがあり、一般的に広まるようになったも

          ブラック、グレー、いつかはブルー 7

          ブラック、グレー、いつかはブルー 6

          〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 20代のうちに、私はこの会社の中でありとあらゆる経験を積んだ。 大きなプロジェクト、尊敬する先輩と社長との揉め事、頑張っているにも関わらず、便利な奴だとこき使われる日々。 こういう経緯を辛すぎて誰かに相談したりすると、こう言われることが多かった。 「でも、そのおかげで今があるんでしょ?」 「辛いのはあなただけじゃないよ、私なんかね・・・」 「感謝が足りないんじゃない?きっと社長さんはあなたのことを思って・・・」 はいはい

          ブラック、グレー、いつかはブルー 6

          「ブラック、グレー、いつかはブルー」を五話まで書いて、とりあえず体調がすぐれない😭ので、ゆっくり書こう・・・

          「ブラック、グレー、いつかはブルー」を五話まで書いて、とりあえず体調がすぐれない😭ので、ゆっくり書こう・・・

          ブラック、グレー、いつかはブルー 5

          〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 4回目を終えて、悪夢を見た。 ちなみに現在はこの中に出ている会社を退職して2年が経っているので、いわゆるフラッシュバック的なものだと思われる。 しかし続けるのだ。 「どんな無理難題をふっかけてもどうにかする奴」への道を邁進し始めた二十代の私。 そもそも負けず嫌いな性格の私は、与えられた仕事をこなしきれない、という状況が気に入らず、ただひたすらに仕事に打ち込んだ。 すると、やればやるだけ成果はあがり(そりゃそうだ)、先輩後輩問

          ブラック、グレー、いつかはブルー 5

          ブラック、グレー、いつかはブルー 4

          〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 さて、前回があまりにも重かったため、出来るだけライトに行きたいのだが、うまく行くかどうかは神のみぞ知ると言うことで、とりあえず4回目スタート。 ここらで私の仕事について、触れたいと思う。 正式入社は18、そこから6年で私は最も大きなプロジェクトを任される事になった。お前に任せる、と言われた時は、正直喜びより恐怖の方が大きかった。なぜなら、今まで大きな仕事を任された先輩だちが、叱咤されているのを見てきているから。 叱咤激励で

          ブラック、グレー、いつかはブルー 4

          ブラック、グレー、いつかはブルー 3

          〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 ある先輩の話をしようと思う。 彼はとても優秀で思いやりがあり、どこにも欠点の見つからないパーフェクトな人物だった。同僚、後輩はもちろんのこと、先輩や社長にも一目置かれていた。 軸と言おうか、彼の存在が当時の会社を支えていたと言っても過言ではなかった。 彼の魅力に引き込まれる女性はたくさんいたと思う。 私はこの頃、会社の、そして社長のブラック加減をほんのりと感じ取れるようになっていた。しかし辞めるという選択肢は私の中には当然

          ブラック、グレー、いつかはブルー 3

          ブラック、グレー、いつかはブルー 2

          〜社畜は鬱になって、生き直すことに決めました〜 そもそも私がこの会社に入ることになったきっかけは、高校生の頃。17歳、高2の時にアルバイトという立場で入った。 (働いて30年、というのはこの17歳の時からの計算だ) とは言ってもいわゆる普通の高校生がするバイトとは違う。特殊な職種であったため、ほぼ「修行」のようなものだったと思う。 思えばあの時から、よくよく観察すればブラックの片鱗を垣間見ることができたはずだった。しかしなんといっても私はまだ十代のひよっこ。見抜く力な

          ブラック、グレー、いつかはブルー 2

          わたしのおにいちゃんのはなし 24

          第二十四話 兄が家を出たのは、あの騒動の一週間後だった。 出るまでは、毎日母と、父と兄が口論を繰り返し、それが始まるとわたしは無言で二階の部屋に上がった。最初は怒鳴り声がする度に心臓が痛んだが、一週間も続くと、ため息しか出なくなっていた。 ある日、母から話を聞いたのか、父が事情を話す、と言ったのをわたしは断った。 (華にちゃんと説明しなかったのは父さんと母さんの落ち度だ。全部話すから聞きなさい) (・・・要らない) (華・・・) (今更聞きたくない。聞くならみーく

          わたしのおにいちゃんのはなし 24

          わたしのおにいちゃんのはなし 23

          第二十三話 夕食は食べなかった。というか、部屋から出ていかなかったというのが正しい。 部屋の扉の内側にタンスを移動させて鍵の代わりにした。 兄はどうしただろうか。 双羽さんは本当に兄から離れてしまうんだろうか。自分の部屋で悶々としていたわたしは、兄がいつ二階の部屋に戻ってきたかどうかも解らなかった。 時々階段を上がってくる音がしたが、多分それは母だ。さすがに今夜はノックをしてこなかった。 わたしはひとり、机に座って考えていた。 大人になりきれない中学二年生女子の精一杯

          わたしのおにいちゃんのはなし 23

          わたしのおにいちゃんのはなし 22

          第二十ニ話 岡田先生と話をした翌々日、わたしはいつも通りに宮ちゃんと下校した。 あの雨の日のことは言わなかった。 山岡くんのことは、宮ちゃんが必要なら言うだろうし、言わないのならそれはそれで良かった。 岡田先生の話を聞いて、少しは前向きになれたものの、急にすべてを悟れるわけでもない。 なので、わたしは余計な情報を入手せず自分を守ることにした。わざわざ聞き出して、治りかけの傷をえぐる必要はないと思ったからだ。 高校進学については動きがあった。 依然母は、誉第一ではなく黒谷女

          わたしのおにいちゃんのはなし 22

          わたしのおにいちゃんのはなし 21

          第二十一話 「木崎」 無音で泣いていたわたしの背後から、聞き慣れた声がした。あわてて涙を拭いて振り返ると、副担任の岡田《おかだ》先生が立っていた。 「どうしたんだ・・・こんな時間に」 まもなく下校の最終チャイムがなる。すみません、とわたしは鞄を持って立ち上がった。 「待て待て、ちょっと落ち着け。座って座って」 「か、帰ります」 「いいからちょっと待てって。な?」 岡田先生は、うちの先生の中でも若い方で、たぶん三十代半ばぐらいだ。女子に人気の高いさわやか系で、バ

          わたしのおにいちゃんのはなし 21

          わたしのおにいちゃんのはなし 20

          第二十話 今日は宮ちゃんは塾の日だ。 朝は一緒に来たけれど、雨が降っていたせいもあってあまり話が出来なかった。クラスが変わってしまってからは、朝だけが宮ちゃんとの情報交換が出来る大事な時間だった。 もちろん兄の問題については話せない。そもそもわたし自身、何があったのかはっきり知らないのだから。 それ以外は、宮ちゃんには何でも話した。隠し事や秘密はなかった。少なくとも、わたし側には。 その日の放課後は日直だったため、担任の先生にコピーやら、プリントの綴じ作業を手伝うように言

          わたしのおにいちゃんのはなし 20