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[西洋の古い物語]「三匹の熊の物語」

こんにちは。
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
今日は、三匹の熊と小さな女の子のお話です。
ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。

 
「三匹の熊の物語」
 
 
昔々、三匹の熊がおりました。三匹は森の中の一軒家で一緒に暮らしておりました。一匹めは小さな熊、二匹めは中ぐらいの熊、そして最後は大きな熊でした。

三匹はそれぞれポリッジを入れる用のお椀を持っておりました。小さい熊のは小さなお椀、中ぐらいの熊のは中ぐらいのお椀、大きな熊のは大きなお椀でした。また、それぞれが座るための椅子を持っておりました。小さな熊のは小さな椅子、中ぐらいの熊のは中ぐらいの椅子、大きな熊のは大きな椅子でした。また、眠るためのベッドをそれぞれ持っていました。小さな熊のは小さなベッド、中ぐらいの熊のは中ぐらいのベッド、大きな熊のは大きなベッドでした。
 
ある日のこと、三匹は朝ごはん用にポリッジを作り、それぞれのお椀によそいますと、あまり急いで食べ始めて口を火傷しないように、ポリッジが冷めるまで森の中を散歩しました。なぜって、彼らは礼儀正しくて躾の良い熊たちだったからです。
 
彼らが出かけている間に、ゴルディロックスという小さな女の子が熊たちの家のそばを通りかかりました。彼女は森の向こう側に住んでいて、お母さんからお遣いに出されていたのです。窓から覗いてみて家の中に誰もいないのを見ると、ゴルディロックスはドアの掛け金を上げました。ドアには鍵はかかっていませんでした。熊たちは誰にも悪さをしない良い熊たちでしたし、誰かが自分たちに悪さをするなどと一度も疑ったことがなかったからです。

かくしてゴルディロックスはドアを開けて中に入りました。テーブルの上にポリッジを見つけますと、彼女はとても喜びました。もし彼女が躾の良い女の子だったなら、熊たちが家に帰ってくるまで待っていたことでしょうね。そして、多分、熊たちは彼女を朝ごはんに招いたことでしょう。だって、彼らは良い熊たちでしたから。熊流に少しばかり無作法だったりしますけれど、それでも彼らはとても気立てが良く、おもてなしを心得ておりました。しかし、ゴルディロックスは生意気でお行儀の悪い女の子でしたから、勝手にポリッジを食べ始めてしまいました。
 
まず大きな熊のポリッジをお味見しましたが、彼女には熱すぎました。次に中ぐらいの熊のポリッジを一口食べてみましたが、冷めすぎて彼女のお口には合いませんでした。そこで小さな熊のポリッジを試してみたところ、熱すぎでも冷めすぎでもなく、ちょうど良い加減でした。あまりに美味しかったものですから、彼女は一口残らず全部平らげてしまいました!
 
ゴルディロックスは疲れておりました。お遣いのために走ったからではなく蝶々を捕まえていたからなんですけどね。そこで彼女は大きな熊の椅子に座りました。しかし、その椅子は彼女には硬すぎました。そこで中ぐらいの熊の椅子に腰かけましたが、その椅子は彼女には柔らかすぎました。小さな熊の椅子に座ってみますと、それは硬すぎでも柔らかすぎでもなく、ちょうどいい感じでした。そこでその椅子に深く腰をおろしましたところ、座面が抜けて彼女は床にどすんと落っこちてしまいました。彼女はすっかりご機嫌を損ねてしまいました。だって彼女はおこりっぽい小さな女の子でしたから。
 
ゴルディロックスは休憩することにしました。二階に上がり、三匹の熊たちが眠る寝室に入りますと、まず、大きな熊のベッドに横たわりましたが、そのベッドは頭のところが彼女には高すぎました。次に中ぐらいの熊のベッドに横になりました。でも、それは足のところが彼女には高すぎました。そこで小さな熊のベッドに寝てみましたら、それは頭のところも足のところも高すぎず、ちょうどピッタリでした。彼女は横になって気持ちよくおふとんにくるまりますと、やがてすっかり眠り込んでしまいました。
 
その頃には三匹の熊たちは、お行儀良く食べるのにちょうどよくポリッジが冷めた頃かなと思い、朝ごはんを食べに家に戻ってきました。

ところで、うっかり屋のゴルディロックスは大きな熊のスプーンを彼のポリッジの中に突き立てたままにしていました。
「僕のポリッジのところに誰かが来たんだ!」
と、大きな熊は荒々しい不機嫌そうな大声で言いました。
すると、中ぐらいの熊も自分のポリッジを見て、やっぱりスプーンが突き刺さっているのを見つけました。
「僕のポリッジのところに誰かが来たんだ!」
と、中ぐらいの熊は中ぐらいの声で言いました。
そこで、小さな熊が自分のを見てみますと、スプーンはポリッジのお椀の中にありましたが、ポリッジはすっかり無くなっていました!
「誰がが僕のポリッジのところへやってきて、全部食べちゃった!」
と、小さな熊は小さな声で言いました。
 
誰かが家に入って小さな熊の朝ごはんを食べてしまったことがわかりましたので、三匹の熊たちはまわりを見回しました。
 
うっかり屋のゴルディロックスは大きな熊の椅子から立ち上がるとき、硬いクッションをまっすぐになおしておきませんでした。
「誰かが僕の椅子に座ってた!」
と大きな熊は荒々しい不機嫌そうな大声で言いました。
 
うっかり屋のゴルディロックスは、中ぐらいの熊の柔らかいクッションの上に座って、クッションをへしゃげさせていました。
「誰かが僕の椅子に座ってた!」
と、中ぐらいの熊は中ぐらいの声で言いました。
 
「誰かが僕の椅子に座ってた!そして、座るところが抜けちゃってる!」
と、小さな熊は小さな声で言いました。
 
三匹の熊たちは強盗のしわざかもしれないと思い、もっとよく調べてみるほうがいいと考えました。そこで彼らは二階に上がり、寝室に入りました。
 
ゴルディロックスは大きな熊の枕をいつもの場所から引っ張ってずらしていました。
「誰かが僕のベッドで寝転がっていた!」
と、大きな熊は荒々しい不機嫌そうな大声で言いました。
 
ゴルディロックスは中ぐらいの熊の長枕をいつもの場所から引っ張って動かしていました。
「誰かが僕のベッドで寝転がってた!」
と、中ぐらいの熊は中ぐらいの声で言いました。
 
小さな熊が自分のベッドを見に行くと、長枕はいつもの場所にありました!それに、枕も長枕の上のいつもの場所にありました!
そして、枕の上には?
そこにはゴルディロックスの黄色い髪の頭がありました。でも、その頭は所定の場所にはありませんでした。だって、彼女の知ったことではありませんでしたから。
「誰かが僕のベッドで寝てた、そしてまだ寝てる!」
と小さな熊は小さな声で言いました。
 
さてさて、ゴルディロックスはというと、眠りながら大きな熊の荒々しい、不機嫌そうな大声が聞こえたのですが、あまりにぐっすり眠っていたものですから、彼女にとっては風がゴーゴーいう音か雷がゴロゴロいう音ぐらいに過ぎませんでした。次に、中ぐらいの熊の中ぐらいの声が聞こえましたが、彼女にとっては夢の中で誰かが喋っているぐらいに過ぎませんでした。でも、小さな熊の小さな声が聞こえたとき、その声はあまりに鋭くて甲高かったので、彼女はたちまち目を覚しました。

彼女は飛び起きました。そして、三匹の熊たちがベッドの一方の側にいるのを見ると、彼女はもう一方の側に転がり下りて、窓の方へ走り寄りました。ちょうど窓は開け放たれておりました。と言いますのも、熊たちは、きちんとした良い熊ならそうするように、朝起きた時には寝室の窓をいつも開けておくからです。かくして、悪い子のゴルディロックスはびっくり仰天して窓から飛び降りました。

彼女は落っこちて首根っこを折ったでしょうか。それとも森に駆け込んで迷子になったでしょうか。あるいは、森を抜ける道は見つかったけれど、お遣いをずるけた悪い子だったので鞭でおしおきされたでしょうか。それは誰にもわかりません。でも、三匹の熊たちはもう二度と彼女に会うことはありませんでした。
 
「三匹の熊の物語」はこれでお終いです。

熊流にちょっと荒っぽいけれど、礼儀正しくてお行儀の良い熊たち、といいますと、くまのパディントンを思い出しますね!
小さな熊のポリッジは食べられてしまいましたが、きっと大きな熊と中ぐらいの熊が自分たちの分を分けてあげて、三匹で仲良く朝ご飯を食べたことでしょう。でも、小さな熊はどこに座って食べたのでしょうか。椅子の修理はできるのでしょうか。いろいろと気になります。

ゴルディロックスという名前は、「金髪」を意味するのでしょうね。お行儀の悪い、ちょっと生意気で、でもきっと、とっても可愛い女の子なのだろうと想像しています。ゴルディロックスは無事に家に帰れたのでしょうか。心配です。お母さんに叱られるのは仕方ないとしても、鞭で叩かれるのは可哀想ですね。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。

このお話の原文は以下の物語集に収録されています。


次回をどうぞお楽しみに。

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