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[西洋の古い物語]「妖精と靴屋」

こんにちは。
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
今回は気の良い靴屋とおかみさんが不思議な経験をする物語です。
ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。

※ 画像は物語とは関係ないのですが、蝋梅の花です。昨日、きれいに咲いているのを見つけました。春の訪れを感じますね。一説には蝋細工を思わせる花の質感から「蝋梅」と呼ばれるそうです。ご近所のお宅のお庭で咲いていたので写真を撮るのは控え、フォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございました。

「妖精と靴屋」
(ホレイス. E. スカダー作)

 昔、とても働き者で正直な靴屋さんがおりました。しかし、稼ぎは生活するのに十分ではありませんでした。とうとう、一足分の靴が作れるだけの革以外は何も無くなってしまいました。彼はある夜、その革を切り出しました。翌朝早起きして靴を仕上げるつもりだったのです。

 彼は苦労にもかかわらず心は軽やかでした。なぜなら彼の良心は澄み切っていたからです。だから心配事は全て神様にお預けして心静かにベッドに入り、彼は眠りにつきました。朝になりますと、彼はお祈りを唱え、仕事をしようと腰を下ろしました。すると、びっくり仰天したことに、そこには靴がもう仕上がってテーブルの上に載っていたのです。

 善良な靴屋は言葉もなく、どう考えたらよいのかもわかりませんでした。彼は仕上がった仕事をまじまじと見ました。どこにもでたらめな縫い目はありませんでした。全ての縫い目はきちんとしていて正確でした。

 その日、お客さんがやってきました。お客さんはその靴をとても気に入りましたので、通常よりも高い代金を喜んで払ってくれました。靴屋はそのお金をいただき、2足分の靴を作れるだけの革を買いました。彼は晩のうちに靴革を切り出し、早めに休みました。日の出とともに起きて仕事にかかりたいと思ったからです。でも面倒なことは全てしなくてよくなりました。なぜなら、朝彼が目を覚ましますと、仕事はもうやってあったからです。するとすぐに買い手がやってきて、その品物に良い値段を払ってくれました。そこで彼はもう4足分の革を買いました。

 靴屋はまた夜なべして革を切り出しました。そしてまた、それまでのように、朝になったら仕上がっているのを見出しました。そんなことがしばらく続きました。夜準備をしておいたものがいつも夜明け前までには出来上がっていたのです。善良な靴屋はすぐに裕福になりました。

 クリスマスの頃のある晩、靴屋とおかみさんは暖炉を囲んで腰かけ、お喋りをしておりました。彼が言いました。
「今夜は遅くまで起きていて見張っていようと思う。誰がやってきて私のために仕事をしてくれているのかわかるようにね。」
そこで二人は灯りをともしたままにして、どんなことが起こるか見るためにカーテンの後ろに身を隠しました。

 真夜中になるやいなや、二人の小さな妖精がやってきました。彼らは靴屋のベンチに座ると、切り出された革を全部手に取って、小さな指をせっせと動かし始めました。彼らはとても細かく縫い、トントンと叩き、靴底の前半分を半張りしましたので、靴屋はぴっくり仰天し、彼らから一瞬も目を離すことができませんでした。

 彼らは仕事が仕上がるまで手を止めませんでした。靴はもう履くばかりとなってテーブルの上に置かれました。それはまだ夜が明けるずっと前のことでした。そして彼らは稲妻のように素早く走り去りました。

 翌日、おかみさんは靴屋に言いました。
「あの小さい妖精たちが私たちをお金持ちにしてくれたのだわ。あの子たちに感謝しなくちゃね。そしてお返しに何か良いことをしてあげなくちゃ。あの子たちがバタバタ走り回っているのを見て、私、悲しかったわ。だって、寒さをしのぐものを何も身につけていないのですもの。私、銘々にシャツと上着とチョッキと、それからズボンをこしらえるわ。あなたはそれぞれに小さい靴を作ってあげて。私たち、そうするべきよ。」

気のいい靴屋はこの考えが非常に気に入りました。ある晩、彼とおかみさんは衣服一式を仕上げて、いつもの切り出した革のかわりにテーブルの上に置いておきました。そして二人はカーテンの影に隠れ、小さな妖精たちがどうするだろうかと見ておりました。

 真夜中になりますと、妖精たちがやって来て、いつものように仕事につくため腰を下ろそうとしました。でも、そこに彼らのための衣服が置いてあるのを見ますと、彼らは声をあげて笑い、大喜びしました。そして一瞬のうちに衣服を身につけると、踊ったりはねたり、あたりを跳び回ったりのはしゃぎようで、しまいには彼らは踊りながらドアから出て行き、緑の野をこえて行ってしまいました。

 靴屋はそれ以降彼らの姿を見ることはありませんでしたが、彼が生きている間中、何もかもがうまくいきました。

「妖精と靴屋」の物語はこれでお終いです。

貧しいけれど仕事熱心な正直者を、その家に秘かに住んでいる小さな生き物が助けてくれる、という物語はいろいろなバージョンがありますね。夜中に仕事を仕上げてくれるのは妖精だったり侏儒だったり、ネズミだったりします。小さな生き物たちなので、細かい仕事を見事に仕上げてくれることが多いようですね。

この物語の原文は以下の物語集に収録されています。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。
次回をお楽しみに。


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