RED STRING
-第1章-
もうすぐ母の季節が訪れる。つややかに黒く光るインクが母宛の便箋の上でじゅわっと染みわたってしまったのを眺めた。地元から車で16時間ほど離れた町で寮制学校に通っていた私は、冬休み中にボランティアに参加しなければならないという仮の予定をつけて、年越しに帰省することを断っていた。春が過ぎたら、私も大人だ。母の手を借りず生きていける。だからそれまでの辛抱。と、自分に言い聞かせながら、ペンにこびりついたインクを拭き取り、つま先に伝わるヒーターのぬくもりを感じて眠りについた