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マスク報道の不可思議

品薄だったマスクがようやく店頭に出回るようになり、価格もだいぶ落ち着いてきた。これは私の実感でもあるが、メディアでも報道が多くなされている。しかし、どうも私は釈然としない。

今、出まわったら需給バランスはもう大丈夫なのか?

もともと、新型コロナウイルス感染症問題の発生前、2018年度は1年間で約55億枚が生産されていた(うち輸入44億2700万枚)。つまりひと月当たりに換算すると4億7千万枚程度である。これに対して、報道を見ると今年は4月7億、5月には8億枚程度生産との情報である。

月9億枚とすると年間で108億枚となる。感染症問題発生前の、倍を超える生産(国内+輸入)になる。

それで大丈夫なのか

 数日前、電車にのった時、マスク着用の人がどの程度か数えてみた。私の真向かいの座席列では全員が着用していた。左前方の座席列でも一人だけ付けていない人がいたが、ほぼ全員着用している。

 日本の人口は約1億2000万人である。仮にこの7割が毎日1枚マスク着用すると年間で必要枚数は

需要量の試算(年間)1億2千万×70%×1枚×365日=306億6000万枚

となる。

需要量の年間試算からすると、生産量は(倍増以上しているが)不足している。それではなぜ、いま充足し始めたのだろうか? その理由は以下(私見)である。

 (1)今まで(品薄だった時期を中心に)、数ヶ月分買いだめした人もいれば、買えずに困っていた人もいた。その後、マスク生産が増大し、店頭に出回ってきた時点(現在)では、多く買いだめてきた人の更なるマスク購入行動は一段落した。今は純粋に現在の需要(例えば当面2週間とか)を満たす買い物行動になっている。

(2)「使い捨てマスク」から「繰り返し使えるマスク」へのシフトが起きている。

 これからどうなるのだろうか。二つのシナリオ

 要因(1)の場合

これまでたくさん購入し安心していた人が、だんだんストックが減ってきて、また買いだめしようと行動を起こす。すると、次第に品薄になり始める。ただし、生産量が、今年の2月~4月あたりとは違う(倍増以上)ので、品薄にはなるが、あのレベルまでにはならない。しかし、需要量が生産量を上回っているので品薄にはなる。

要因(2)の場合

繰り返し使えるマスクの使用者が増加しているので、現在の買い物行動によるマスク購入量(極端に多くマスクを買う人はあらわれない)が継続し、現在のように安定的に店頭にマスクが存在し品薄にならない。

実際には要因(1)+(2)

繰り返し使えるマスク着用の人が増加するが、そうはいっても出かける状況で使い捨てマスクも使う。また、使い捨てマスクだけを使用する人も相変わらず存在する。したがって要因(1)と(2)の混合になる。

政府が繰り返し使えるマスクを配布した(ようやく配布作業も目途が立ったようである)。マスクの需給関係が落ちつき、店頭に出回ってから配布されても意味ない、という報道が多く見られる。確かに現在だけを見るとそう見える。しかし、少し先(当面の1年程度)でみると、マスクの生産量と需要量の関係は完全に解決したとも思えない。配られたものか、購入したものかは別として、繰り返し使えるマスクと使い捨ての併用をしたほうがいいように思える。

それにしてもメディアはマスク問題を報道する際、需要量と生産量の全体像をなぜ伝えようとしないのだろうか? 







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