【歴史をつなぐ一筋の光】テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ 国立新美術館
すごく、よかった…
見に行ってよかった。
展示品の素晴らしさももちろん、展示構成が抜群に面白くこれを見終わったあとにいろんなことが腑に落ちるというか、そういう体験をした。
ターナーから始まる光の冒険
ターナーってあの海の絵とか風景の、でしょ?的な印象が抜けなかったのだ。5月に静岡県立美術館でみたのは湖の作品「パッランツァ、マッジョーレ湖」。
水辺の風景が上手い人、的な認識だった。
ところが教授としての側面も持ち、ロイヤル・アカデミーでの講義、光の考え方はその後、脈々と様々な方面に影響を与え続けバウハウスにまでたどり着く。
そこがそう、繋がるのか!
という目からウロコ情報を挟みながら
「ターナーが追った光を後世の芸術家がどう向き合い、どんな作品にしてきたのか」を展示していく今回の展示構成がすごく面白かった。
いや、第一室にカプーアある時点で(こりゃやべぇな…)と思ったけどさ。
一般的な「◯◯美術館展」のつもりで見るとちょっとびっくりすると思う。
ターナーからモネ。モネからヴィルヘルム・ハンマースホイへ。
モネの青空。彼にもこのように青空が見えていた時期があったのだな、とモネの目を切なく思う。
戸外から室内へ移っても光につきまとわれる。
今回初めて見たハンマースホイの作品が非常に心に残った。
なんでもない風景なはずなのに光が描かれると美しい一瞬になる。
非常に写真的な絵画というか。なんでもない風景、と思った瞬間にアジェの写真が浮かんだし、春に千葉市美で見た写真展も「なんでもない風景」とタイトルについていたな。
でもこの窓からの光。描き残したかったのだろう。
光から色彩科学へ
光から色彩科学に繋がりカンディンスキーに続き
ライリー(!)、ロスコがきてリヒター!この流れ。
そうだね、色だよね。色彩と目の認識の人たちだよね。
ライリーのカラーチャートとリヒターのカラーチャートが頭をよぎる。
その背後に広がる軽やかなクラフト作品。
この展示室の流れが好きすぎてかなり長居してしまった。
現代作品の展示へ
毛色の違うジュリアン・オピーの作品に驚きつつ時代は現代作品の展示へ。
オラファー・エリアソンとジェームズ・タレルが同じコーナーに展示された時、そうだよね。光の話になると、現代だったらタレル→オラファーだなぁと妙に感慨深い。オラファーはもう少し「環境」寄りだが。
数年前、現代美術館でオラファー・エリアソン展を見た時、90年代に世田谷美術館で開催されたジェームズ・タレル展を思い出したのだ。
2020年のオラファー・エリアソン展も98年のジェームズ・タレル展も長谷川祐子氏が携わっている。
この章を理解する下地としては十分な伏線だったのだ。22年分の伏線だったわ。
と、そんなことを思いながらオラファー・エリアソンの光に包まれて展示は終了。
あれ?ターナーから始まった光の旅がオラファーで終わったよ。
なんでしょうこの達成感。到達感。
今回チラシのキービジュアルが複数存在していたのも納得だった。
ターナーを見に来ても良いし、リヒター、オラファーを目当てでもよい。
光という軸を中心に近世から現代の絵画の流れがストンと飲み込める。
ぜひ、いろんな作品目当てで様々な年齢層が訪れて、受け入れてくれたら良いなと思う。
余談1
イギリスのテート美術館の編成や仕組み、テート・モダンやテート・ブリテンなど個別に耳にしてした館名の繋がりをやっと理解できた気がする。
知っているようで知らない、イギリスの美術館。
一つの美術館が中世、近代、現代をまとめて管理しているというシステムに驚いた。
余談2
イギリスのターナー賞の存在は知っていた。
受賞者のクセがすごいのも印象深い。
ギルバート&ジョージ、リチャード・ロング、ゴームリー、ダミアン・ハースト…などなど。
書き出しただけで「あぁ…うん…」となるメンツ。
なんでターナー賞なんだろう?と思っていたが今回の展示を見るとターナーの功績の大きさを改めて実感することとなった。だからかぁ。
余談3
ターナーといえばアクリルガッシュのメーカー名という馴染み深さもある。
正式社名はターナー色彩化学工業株式会社。由来はJ・M・W・ターナーなんだろう。