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【気がつけば3本立て】「時間旅行 記憶 写真に生きる」東京都写真美術館

3月から4月にかけて新しい展覧会が始まり、現在3本立て開催中の東京都写真美術館(写美)へ。
東京都現代美術館(都現美)で3本立て観覧は1日では無理だが、写真美術館の面積だったらなんとかイケる。
というわけで都内では珍しく木曜日に夜間開館を行っている写美に17時〜19時半頃まで滞在。

3F TOPコレクション 時間旅行 千二百箇月の過去とかんずる方角から
2F 記憶:リメンブランス ―現代写真・映像の表現から
B1F 没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる


24年度のぐるっとパスの販売も始まったので、さっそくパスに火を吹いてもらった。
ここの館は割引システムがものすごく複雑。
別冊「ニァイズ」でも度々、あのクソ遅いエレベーターと共に話題になっていた。

案の定、受付のチケット売り場の方々があーでもないこーでもないと話し合った結果、これが一番オトク、というチケットの買い方を提示してくれる。
私の所持品諸々の問題だが、この組み合わせを覚えなくてはいけない販売担当の方は大変だと思う。今回はぐるっとパスの入場&割引&東京都現代美術館年パス割引の3つを使用。

さて、春の人事異動の話題だと2024年度から長野県立美術館の館長となった元アーティゾンの笠原さんも写美出身。
別冊「ニァイズ」ではいつもド派手な格好でビシバシしている様子が書かれていたので親近感というか、なんか感慨深い。長野県立美術館を盛り上げて欲しい。

https://topmuseum.jp/contents/extra/nya-eyes_pdf/2016_04.pdf



前置きはこれくらいにして。


3F TOPコレクション 時間旅行 千二百箇月の過去とかんずる方角から


いわゆる写美のコレクション展示室。
概要はこちら。

本展覧会は「時間旅行」をテーマとする東京都写真美術館のコレクション展です。

東京都写真美術館公式サイトより



この展示の中でグッときた作品。

杉浦非水の地下鉄ポスター

写真美術館なのに国立工芸館からの借用品かい!と突っ込みたくもなるがまぁそれは置いておいて。
現在の東京メトロ、開通当時は東京地下鐵道󠄁株式會社の頃の銀座線開通ポスター。日本で最初に開通した地下鉄銀座線へのプロモーションはそれはそれは大々的だったのだなぁ、と。

カステラ電車



このポスターに載っている旧1000形が現在走る東京メトロ1000系の原型であって…レトロな方向へ車両デザインが回帰するのって珍しいなと思った。丸ノ内線も同じく旧型回帰の車両が走っている。丸窓タイプ。
自分は90年代後半、営団地下鉄時代に銀座線で通学していたこともあり、ステンレス車両に黄色のラインが馴染み深いけれど。

銀座線自体の広告ポスター、銀座線と広告…で思い出すことといえば…
98年の銀座線広告ラッピング電車だろう。
2000年以降、今でこそ、ラッピング電車ことトレインジャックはキャンペーン広告の常套手段だったりおなじみだったりするわけだが、その初期、1998年頃で良く覚えているのがB'zのベストアルバムのプロモーションで銀座線をトレインジャックしたこと。
私は乗り合わせることができなかったがかなりのインパクトだった。あれも広告の歴史の一部となっているのだろうか。
音楽アーティストの広告をなぜ車両広告でやろうと思ったのか、あの広告を請け負った代理店はどこだったのだろうか。

私もヤマサ愛用者

かつてここで


30年ほど前の恵比寿の街。
一番最初につれてきてもらったのは父だった。
1994年ぐらいで、ガーデンプレイスがオープンするという&サッポロビールの見学所があったのでビール好きの父が暇を持て余した私と妹を連れてきてくれたのだ。まだ渋谷の街もQフロントもなくて今のヒカリエのところにプラネタリウムもあって、もちろん東横の駅もあって…という時代。

今回、この土地を振り返る企画をやってくれてよかった、というか資料がちゃんと残っているのか!と感激した。
私達が訪れるほんの数年前の風景なのだが、過去の姿がきちんとフィルム写真で残っているのは良いな。

1990年恵比寿
1948年の渋谷。



こうして書き出してみると、展覧会は写真を見ながら自分の過去と関わりを思い出す場面が多くあった。

あぁ、まさにタイトルの時間旅行だったのかもしれない。


2F 記憶:リメンブランス ―現代写真・映像の表現から


2階に降りてきて、今度は記憶、である。
概要はシンプルに載せる。

写真・映像は、人々のどのような「記憶」を捉えようとしてきたのでしょうか。

東京都写真美術館公式サイトより


やはりここは、先日お亡くなりなった篠山紀信氏の写真だろう。
私世代が物心ついた頃から写真家として名前を知っていたのって篠山紀信氏の名前なんではないかな。
篠山紀信か土門拳か。
そのぐらいの知名度である。
それは芸能人の写真を多く撮っていたからとか、テレビでも見かけたからとか色々要因はあるだろう。

先日、東京国立近代で高梨豊氏の家を撮影した写真を見たが篠山紀信氏の家の写真もまた、良い。
失われたこと、に対して時間軸を戻す「記憶のための家の写真」になる。
「確かにそこに人がいた」が伝わると見ている方の胸に迫るものがある。
記憶と喪失を第三者が見ても感情が揺さぶられるのなら、この家の写真に関わりある方が見たらどう思うのだろうか。

今回は写真以外の作品展示も印象的。


B1F 没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる


地下に降りてきて今度は歴史、か。
現代写真史において毎年話題となる木村伊兵衛賞についている人名、そのもの。写真界の芥川賞か直木賞か。

木村伊兵衛展は展示室内は撮影禁止。



この展覧会は、正直観ててホッとしたというか癒された、というか。

ここ最近、風景論やアヴァンギャルド系、シュールレアリズム系列を切り口とした写真を見ることが多かった。瀧口修造生誕120年とかシュールレアリズム宣言100周年とかそのタイミングが重なっていたせいもあるだろう。
面白い、興味深いけれど、刺激もまた強い。

今回はただ静かに「写真」だった。
木村伊兵衛の哲学はある。
でも穏やかな視点と柔らかな表現は見ていて癒しに繋がる。
失われた風景も写真の中にたくさん残されているが、それでも今も昔も変わらぬ人の温かみ、が伝わる写真だ。

時間と記憶、記憶媒体の写真とは


今回は全館を通して時間軸、時間旅行を意識できた3本立ての展覧会だった。
そして少しずつ写真美術館の展示も様子を変えてきているな、と思うこともあり、今年も訪問が楽しみだ。四階の図書室にもぜひ行ってみたい。

新宿駅西口の小田急百貨店が消えた。
この風景も私が記録した意味がいつか生まれるだろうか。

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