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【刺激】Artisanal 2024 Exhibition Tokyo メゾンマルジェラ恵比寿


Maison Margiela

創始者マルタン・マルジェラは2008年で既に引退をしている。
2014年からクリエイティブディレクターを任されているのはあのジョン・ガリアーノ。
2015年ブランド名はMaison Martin MargielaからMaison Margielaへ。

ジョン・ガリアーノの一連の騒動は思い出すと鬱々とするし、やっぱそりゃだめだろうとなる。
けれど彼の作品を見ると悔しくも惹かれる。
欠落した良識と引き換えに素晴らしい服を作り出す手を手に入れたのかとさえ思ってしまう。

しかし、マルタン・マルジェラ本人の引退後を任されたのはジョン・ガリアーノだし、世間のブランド認知度は益々上がるばかり。

その結果を見れば成功なのかもしれない。

なんで恵比寿に路面店作ったんだろう?

体験型の展示

恵比寿のマルジェラ本店で、今シーズンのコレクションをテーマにした、体験型の展示をしているので見てきた。

会場は狭くて、薄暗いけども至近距離で洋服の縫い目を見るならば良いのかもしれない。


所狭しと作品が置かれる


会場はかなり暗い。
このチュールドレスも良かった…この端の処理がキモだな。
至近距離で見れるのは楽しい。
オーガンジーだからこそこの什器。


コルセットのシリーズは初期、マルタン・マルジェラ時代のオマージュだろうか。と、思ったがあれはコルセットではなく、トルソージャケットだったか。


参考:マルタン・マルジェラ  
1997年春夏 ジャケット
着せる為のトルソーが着るものになる、という。


でもなんか、意識はしているのかもしれない。


これを見た時「ひゃー、ガリアーノだな」と少し笑った。DIOR時代を彷彿させる、グレーのセットアップ


参考:DIOR時代のガリアーノのドレス。
京都服飾研究財団蔵 1997年。
マルタン・マルジェラがトルソージャケット作ってた時期と一緒なのか!

こうして少し歴史を辿ってみるとなんだか不思議な気持ちになる。同時期に違うフェーズで洋服を作っていた2人が交錯するのだものな。

人が着て生き生きとする服

しかし洋服というのは生身の人間が着て、動いてなんぼだな、と。

展示を見た後、階下で映像作品が見れるのだが、それが素晴らしかった。
やはりセットでしっかり時間をとって見るべきだ。

ミシンの映像は滾る
ひゃー、あのチュールを縫うんかい。


コレクションのイメージ映像、ショーの映像、制作過程の様子。


先程のジャケット。着用映像


先ほど見たあの生地も、あのドレスもスーツもこうやって手で作られている。
コルセットのせいで、どのモデルも画一化された身体を持っているように見せかける服。しかしコルセットさえも様々な形で。

フィッティングの様子も面白い
これも、展示品を見た後だから迫力を感じる。




実際に着れる、着れないはまた別の世界。

やはり何処か美術品を見ている気持ちになる。
布の工芸か。

イメージをイメージ通りに形にする事はとても難しい。
これは何か物を作った制作した事がある人なら誰でも思い出せる苦さなのではないか。

完成が見えている、イメージ通りに出来上がるって尊いことなのだ。
素材、加工、着るモデルとの兼ね合い、縫製の緻密さ。どれ一つ狂っても再現できないはずだ。

この様にして、ため息の出る様な素晴らしいクリエーションを提示され、そのブランドへの傾倒や憧れを増幅させる。
人の「着たい」「期待」をどの様に刺激するのか。

でもそれだけではない。
この展示は未来に続く制作者への刺激にもなるはずだと思っている。

展覧会を見ていて面白かったのは、ただ美しい服を享受したい、ということだけでなく、自分も手を動かしてみたいと思ったことだ。
来場者にも懸命にメモを執り縫い目を見つめる若い世代が居た。恐らく、作り手をしている人や服飾を学び中の人も来ているのだろう。

クリエーションの内側を開示したことにこの展覧会の意義もあると感じた。

いいぞ、もっとやってくれ

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