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【変異種か亜種か】郡山市立美術館 常設展2024年度第3期

福島県立美術館から郡山市立美術館へ。
前章↓

在来線に乗ってガタゴト1時間。郡山へ到着。


貨物列車だ!なんかテンションあがる。

郡山には美大時代の悪友がいる。
福島へ行くよと伝えたら郡山も来るならぜひ会おうということになり、一緒に郡山市立美術館へ行ってきた。
春に盆栽美術館へ行った彼女である。

郡山の駅からバスで15分ほど。
実は20年ほど前も彼女と来ている。

あの時なんで来たんだっけ?と二人で思い出そうとしたけどわからんね?となる。
書いてて思い出した。彼女はよく私の作成した洋服を来て写真の被写体になってくれていたのだ。それでロケ地探してここで色々撮ったんだ。
館内で展示は見ておらず、外の広場の石畳の段々が面白くてぐるぐる歩いて写真を撮った記憶がある。

建築はあの東京都現代美術館や東京オペラシティの設計をした柳澤孝彦氏。郡山市立美術館が1992年開館なので95年開館の東京都現代美術館は設計への布石になった可能性が高い。
東京都現代美術館が好きな建築なので元ネタというかセンパイが見れて嬉しい。

この石の連なり
東京都現代美術館にも似た場所があるし、
なんなら同じ素材使ってるんじゃないか。


平日の15時過ぎだが駐車場にはけっこう車が停まっていた。
「さっき小学生の団体が帰っていったよ」とのこと。

この石畳の感じ、現美のファザード車寄せの所と同じ
紅葉が素晴らしい


美術鑑賞教室かな。いいねぇ。
私が地元でやっている美術鑑賞教室同行ボランティアの話をした。
最近の出来事だと銅像の裸っぷりに注目してゲラゲラ笑う小学生と一緒にニヤニヤした話。だいぶマイルドに書いてるけど「tンコ!」と笑う小学生を前にまぁそうだよねぇ、となった、という話をしたら笑ってた。

そんな話をしてエントランスの銅像(バリー・フラナガンのうさぎ。鐘つきバージョン)に目をやったら人だかりができていた。

なんか人だかりが。



「なんだろ?イベントかな?」と思って、入場券購入時に受付の方に「今ギャラリートークとかやっているのですか?」と訪ねたら
あー、あれはなんかあそこで記念撮影するみたいですよ?場所決めしてんじゃないですかね?(福島弁にて)」と言われて二人でズコーッとなった。
記念写真かい。

笑いながらコレクション展見学開始


郡山市立美術館の収蔵方向性の一つはイギリス美術である。
これはなかなかおもしろいというか、あまりこの方向のコレクションはないかもしれない。
展示室内は撮影禁止のため、参考画像は公式Instagramよりリンクを貼らせてもらった。

郡山市立美術館コレクション概要


郡山市立美術館は、イギリス美術と日本の近代美術、本(版)の美術、郷土ゆかりの美術という4つの柱のもとに作品の収集をおこなっています。

イギリス美術
イギリス近代美術を体系的に収集したコレクションは、国内でも有数のものです。ターナーやコンスタブルの風景画や、レイノルズをはじめとする肖像画からバーン=ジョーンズらラファエル前派へと、18世紀から19世紀の流れをおさえたものになっています。

日本近現代美術
岸田劉生や安井曾太郎といった日本近代を代表する作家たちの作品はもちろんのこと、油彩画の黎明期である幕末明治の作品や、明治期に普及した水彩画、そしてイギリスに学んだ画家の作品も充実しています。

本(版)の美術
​版画や雑誌、本の表紙から挿絵の原画にわたり、国内外の近現代を通観する版画コレクションをそなえています。日本の版画では、幕末から明治時代の玄々堂の銅版画や石版画がとくに充実しています。また、イギリスでウィリアム・モリスが始めたケルムスコット・プレスなどの貴重な挿絵本も収集しています。

郷土ゆかりの美術
郡山には、戦前・戦中の木彫界を牽引した作家のひとりである三木宗策や、洗練されたガラス工芸を生み出した佐藤潤四郎など、優れた作家たちがいます。その作品を収集し、ご紹介し続けています。

郡山市立美術館

第一展示室は今季はウィリアム・ブレイクをはじめ、あまり日本の公立美術館の常設で見かけることのない年代の作品が展示されていて「へぇ!」となった。
1700年代後半のイギリス作家作品。ジョシュア・レノルズやサー・トーマス・ローレンス。ワシントンのナショナル・ギャラリーやメトロポリタン美術館に収蔵されている作家たちだ。

↑ジョシュア・レノルズ。THE肖像画という感じ。
同年代の日本だと若冲ぐらいの時期。北斎もかぶるか。

全国津々浦々、みんな特色があるな。
もちろんターナーとかコンスブルとか、お!という作家の作品の収蔵もある。

福島市とはまた違った郡山地元の作家

安藤重春
日本画だがどこか油絵的なモダンさがある。地元で幼稚園を作った人らしく、「◯◯幼稚園だって、知ってる?」と友人に聞いてみたら「あー、知ってる知ってる。そうなんだ」とのこと。
鴨の絵が暖かく、いいなぁと思って眺めていた。

亀井竹次郎・亀井至一
あ!この名前。松濤美術館・空の発見展で見た作家だ。「郡山から来ているな」と思っていたので会えて嬉しい。石版『懐古東海道五十三驛眞景』油彩原画シリーズ。これで8枚みたことになる。
しかしこれ、近年油絵の原画が見つかった、とされるが近年っていつだろうか?と収蔵番号を覗いてみるとおそらく1994と振られているので、1994年なのではないかなーと。30年前かも。

2022年に「郡山市立美術館開館30周年記念展1 ノスタルジックジャーニー記録する眼 豊穣の時代 明治の画家 亀井至一、竹二郎兄弟をめぐる人々」と題して特集展示が行われたということだ。今更見たかった。

佐藤潤四郎
ガラス工芸家。2024年11月現在、Wikipediaに項目がなかった。
サントリーのスーパーニッカというウィスキーをご存知だろうか?
その瓶の原型をデザインした方。ここ郡山出身とのことで収蔵されている。

手吹きウイスキーボトル《スーパーニッカ》初号モデル

彫刻作品を探す

事前にアントニー・ゴームリーの作品があることは知っていたので、画像検索はせず、現地で見るのを楽しみにしていた。

さぁ、あの東近美やオペラシティタイプのズドンと直立した姿をみせるのか、

ズーン
東京オペラシティ



名古屋市美や彫刻の森的地面に密着タイプか?

ピタッ(2024年箱根彫刻の森美術館)
事件性(2024年箱根彫刻の森美術館)
2022年はこの場所だった。動いてるな。
(箱根彫刻の森美術館)



それとも神奈川近代葉山タイプの激レア激細バージョンとか?

細っ!
(神奈川県立近代美術館葉山)

など、どんなタイプと出会えるかワクワクしていたのだが、なんかそれらしき銅像がない。

友人に
「あれー?ゴームリーって人の彫刻が常設されてるはずなんだけども」
と伝えると
「うーん、あれのことじゃね?なんかトゲトゲのさ…いつもこっちにあんだけど
と階段を進む。

トゲトゲ…?
(なんか不穏だな。ゴームリーとトゲトゲってなんか一致しないけども…え、トゲトゲの銅像?)


「これでしょーー?アントニー・ゴームリーって書いてあるよ」

!?!?

「…なんだこのゴームリー?!」


えっ…


嘘だろ


びっくりだなー!!
これなの?!イギリス美術集めてる郡山市はこれなの!?
なんだこの質量の無いゴームリー!!!

残像みたいな写真しかないけど、そもそも残像みたいな作品だ。

というか運び方な…



ゴームリーへの思い込みを鮮やかに覆される楽しさ。
楽しい。こういう驚きだったら何度味わってもいい。

あー…郡山にきてよかったな。

友人へ「いや、いつも見てるのがこんなやつだからこれは…この発想はなかったわ」と手持ちの作品写真をいくつか見せたら「全然違うな!」と納得していた。

ゴームリーの洋書版写真集もみたことがあったのだが、この手のステンレスタイプは見てなかったのだ。
私のなかのゴームリーでダントツ異色扱いだった神奈川近代葉山をぶっちぎって、郡山市立美術館のゴームリー作品が異色No1になった。

帰宅後、わりとゴームリー好きな次男に話したら「ゴームリーの亜種か…変異種か…」と返された。鳥の分類かよ。

館内には不思議な形の椅子や図書コーナーの読書灯がかっこよかったり、見どころ沢山。
ぜひまたコレクション展を見にきたい。

ウニョウニョした椅子
この木の感じ現美の親戚だー!
大きくとった窓から覗く木々が良い。
ここを左に曲がるとゴームリー

そして旧大越娯楽場へ

今和次郎氏が設計した現存する唯一の建造物がお隣の田村市に現存しているので、そこまで連れて行ってくれた。

辺りは暗くなってしまったが外側から見ることができて感無量。

車のライトを利用して撮影
今和次郎の文字!


現在は登録文化財。またの機会に訪れたい。

帰路につく

美術館からは友人の運転でいろいろ移動させてもらった。
若いころにも彼女の運転で郡山近辺の観光地へ連れて行ってもらったものだが、あそこはいつだっけか?結婚後?出産前?震災前?とか冬だった?夏だった?と二人で記憶がもう曖昧でもうゲラゲラ笑いながら適当な事を言っていた。

帰りの新幹線で飲むために買った桃の缶チューハイと、馬肉のサラミが美味しかった。
友人が住む街を訪ねるっていいな、と噛みしめる帰路。良い1日だった。
そしてバッチリ福島訛りがうつって帰ってきた。
子供に大ウケである。


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