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【ゴッホの吸引力】ゴッホと静物画 伝統から革新へ SOMPO美術館

オランダのゴッホ美術館の所蔵品を中心に静物画を見せる展覧会である。
ゴッホ美術館の別館は黒川紀章氏が設計し、損保ジャパンが建設費用の寄付もしている。
そのゆかりもあるのだろう。SOMPO所蔵品のひまわり、もゴッホ美術館が真贋鑑定をしている。
そんな繋がりも見えつつ。

先日、イヴ・サンローランの展覧会で、絵画オマージュ・ドレスを見た時に、ゴッホのアイリスが元ネタの洋服があったのだ。

見切れてしまっているが、向かって左のケースに展示してあるコスチューム。ちょっと小さいけれども。


金色のスパンコールに紫のアイリス。

そのアイデアの元になったのではないかと思われるゴッホのアイリスがオランダからはるばるやってきた。
サン・ローランのドレスと元ネタの絵画が同時期にこの東京で見れるなんて、縁だなぁ!
というわけで「ゴッホ」というパワーワードをまったく意識せずに仕事の昼休みに抜け出してフラッと見に行ってしまった。

ゴッホの集客力を見誤ってた。

こちらは日時指定制をとってますが、開幕2日目にあたる平日、午前のチケットはほぼ完売。ごった返す人。
訪問時間帯の設定を完全に間違えた。ここ最近そこそこ空いてる状態でいろんな展示を見れていたので人の多さにまず驚きが先に来てしまった。


これで、少し人が引いたタイミング。

夕方16時ごろ通りかかった時は昼よりは減っていたので、行ける方は平日午後夕方より〜18時まで(入場は17:30まで)の方が良いかもしれない。又は、11月17日(金)と12月8日(金)は20時までの夜間開館を狙うか。

同日の16時ごろ


会場も狭いのでなんとか展示作品がストレス無く見れると良いのだろうなぁと願う。もしかすると会期中は常に混雑しているのかもしれないが。

作品について

まず、サン・ローランのドレス元ネタになったのではないかというアイリス。

ちょうど広告で表示された。


実は複数枚あるので、今回の来日アイリスがモデルではないかもしれない。どちらかというと、アメリカにあるこちらかもしれない?↓

フィンセントファンゴッホ『アイリス』|Vincent van Gogh|Irises|1889年|image courtesy of the Getty’s Open Content Program.

しかし金地に青紫の花の印象なので今回の来日作品に近いのかな。
いずれにせよ、サン・ローランは複数のアイリスの存在を知っていたのではないか。

さて本物を目の前にすると、筆跡の強さにウッとなる。
鬼気迫るというか。花の絵なのだけども。

筆跡は写真で伝わらないので是非本物を。
1890年って亡くなった年でもあるよね…

なんとなく作者の生涯も頭に入ってしまっているし、そういう先入観で見てしまっているのもある。

そして黄色(ツヤによってゴールドにも見える)に青紫の花、だともう根津美術館の「燕子花図(尾形光琳)」が頭をよぎり始める。

こちらはかきつばた(水辺に群生)ですからアイリス(乾いた土に生える。日本名だと菖蒲)とは別ですが、色合いや形が似ている。
「何れ菖蒲か杜若(いずれあやめかかきつばた)」ということわざがあるほど「似てる」という言葉の代名詞。

でも輪郭線を黒で縁取っているところをみると、やはり版画、浮世絵の影響が強いのかなーとも。

公式サイトの解説を読むと

「ゴッホ自身が「互いに高め合う全く異なる補色の効果」と手紙に語ったように、黄と紫を対比させる色彩の試みとして描かれたと考えられます。」

ゴッホと静物画 伝統から革新へ公式サイトより


とある。
ゴッホの頃にはだいぶ世の中の色彩学も進んでいたから、この表現をする目的があったのだろう。
ではこの補色という概念を尾形光琳は知っていたのか。
色彩学の発達は18世紀後半&海外からなので尾形光琳は知るよしもなかったはず。しかし科学的な理論は知らなくても補色の表現で名作を生み出したこと自体が奇跡に近い。光琳は色の効果というものをわかっていたのかもしれないけれど。

ゴッホが語られる際、ジャポニズムの話が欠かせず、それを考えるとやはり北斎、広重ってすごいのだなぁと思う。
日本でゴッホ人気要因の一つがこういう「日本的作品の影響」と言う名の「縁を感じる」部分にあるのかもしれない。

花瓶の東洋っぽさ。まだ黒縁がない。
日本だと、児島善三郎氏とかはもろに影響しているのだろうなぁ。

【ニシン大好き】

さて今回はこのアイリス以外にももちろん見どころはある。
静物画、というくくりの中でオランダ絵画を中心にした構成は面白い。
オランダは庶民のための芸術が中世から確立されていた国でもある。その市井の人へ開かれた芸術というのにぐっと惹かれるのだ。

2022年、ドレスデン国立古典絵画館の17世紀オランダ絵画コレクションが来日した時に忘れられない1枚の絵があった。絵そのものより作品タイトルが忘れられなかった、というのが正しいだろう。
その名も

ニシンを称える静物

え、ニシンって称えられる対象なの?!という衝撃。
しかしこの絵が数100年守られてきた訳で…
ニシンの塩漬け「ハーリング」という食べ物はオランダ名物なんですね。
ニシンが絵に描かれ、称えられるほど馴染み深い食材だということがよくわかった。

そしたら今回も、あったのです。ニシンの絵。
あ、やっぱりニシンが出てくるんだ、という若干のおかしみ。
そしてゴッホもニシンを描いていた。

燻製ニシンだった


真っ暗な画面だけども。
日本だったら、鯛の絵などが該当するのだろうか。

そんなことを考えながら夕飯にイワシの梅煮を作った。美味しいけどニシンにしてもイワシにしても骨の多い魚は食べるの大変だな。なんてことを考えていた。

そして日常から美術に結びつくオランダ絵画、やっぱり面白いなぁと改めて思った。それなりに混雑はあると思うが、見れる方はぜひ足を運んで本物をその目で!

アイリスとひまわり(SOMPO美術館所蔵品)を並列展示。ひまわりはいつも観れるけどこちらを撮影している人が多い。純粋に人気&ガラスケース無し状態が貴重なのか。(しかし額縁が派手すぎてアイリスと並べるとちょっと…額縁揃えた方が良く無いか?一度額装しちゃうと難しいか)
ルノアールの布の描き方は露光多めの滝の写真みたいだなと。
下のフロアへ行くほど空いている。ゴッホは黄色の置き方に特徴があるんだな。

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