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【生電話システム】福島県立美術館 ポップ・アート 時代を変えた4人POP ART: THE FAB4! & 4 SPECIAL GUESTS &第Ⅲ期コレクション展

9月ぐらいに情報を聞いて気になっていた展覧会。
ちょうど新幹線4割引購入権があったので火を吹かせた。
初、福島県立美術館である。

福島駅から徒歩25分。紅葉が見頃で良い道のりだった。

あー、良い時期に来たんだな!


そして山の麓に現れた福島県立美術館。

とうちゃk…デカくね?
右側。図書館棟とのこと。
左側。こちらが美術館棟



でかい。広い…な。
広角で収められないのはなかなかのサイズ感。
半分は図書館。ちょっと想定した時間で大丈夫か不安になって怯む。
でも高さのある建築ではないので圧迫感はない。背後の山々との調和もすばらしく。
建築は福島県三春町(滝桜で有名)出身の建築家・大高正人による設計だそうだ。
この方、確か千葉県立美術館の設計もしていた気がする。低層の美術館は歩きやすい。

9時半開館。オープン待ちしてしまった。



館内に入ってからも本当に広く、展示室もまだある、まだ終わらない…もう一部屋ある…という状態。企画展と常設展をじっくり見て、3時間半かかった。
展示室内全面撮影禁止のため作品の写真はない。
これなー、惜しい。実に惜しい。
もっと拡散されてもいい美術館なのになー。今回は個人コレクションからの貸出品だから仕方ないか。

企画展 ポップ・アート 時代を変えた4人POP ART: THE FAB4! & 4 SPECIAL GUESTS

展示概要


ポップ・アートは、報道写真、商業広告、量販品のパッケージ、著名人のポートレートなど、日常生活にありふれたモチーフやイメージを美術の中に取り入れ、1960年代のアメリカのアートシーンを席巻しました。
 ロイ・リキテンスタイン(1923-1997)、アンディ・ウォーホル(1928-1987)、ロバート・ラウシェンバーグ(1925-2008)、ジャスパー・ジョーンズ(1930-)はポップ・アートを牽引したアメリカを代表する作家たちです。彼らは反戦運動や公民権運動などの社会運動が相次いで起こった激動の時代において、ポピュラー・カルチャーやロック・ミュージックとの関わりを通じて、アートと社会の姿を変えていきました。
 本展はスペイン出身のコレクター、ホセルイス・ルペレス氏のコレクションから約8作家、約120点の版画、ポスター、服飾品約120点を本邦初公開します。
 同じ1960年代に脚光を浴びたザ・ビートルズの愛称になぞらえて本展では「ザ・ファビュラス・フォー(素晴らしき4人)」と呼ぶ、リキテンスタイン、ウォーホル、ラウシェンバーグ、ジョーンズの作品を中心に、時代を変えたポップ・アートの軌跡をご紹介します。

福島県立美術館公式サイトより

シルクスクリーン中心、それでも早い段階の版だったり、この4人を中心にアメリカポップアートを提示してくれたのは良かった。スペインの方のコレクションというのもなかなかみる機会が無いだろうから、興味深い。

しかしなんかしれっとジャスパー・ジョーンズ混じってますけど彼、生きてますからね(2024年11月15日付け)POP ART界の草間弥生(長生き枠)として私の中で有名。めでたいことなのです。1960年代、来日時に内科画廊に来ている写真を見たことがあったけど衝撃だったな。

リキテンスタインの元ネタを探る


リキテンスタインの作品に対して、どのアメコミのどのコマを元ネタにしているのか提示してあった。原版(漫画の方)とリキテンスタインが作品化した時、どこをアレンジしてどのような表現に昇華したが分かる解説があり夢中で読んでしまった。なかなか知る機会がなかったので、見比べながら作品を見るのは楽しい。そういう部分を意識するとやっぱり「絵画」なんだよなぁ。

申し訳程度に撮影スポットがある。



社会背景の話など解説も面白く読みながらやっぱりデザインの視点ももてるよなぁとか思いながら。(実際ラウシェンバーグはロス五輪のポスターを作っている。)

購入した図録には「ポップアート」という名称がどうやって呼ばれ始め、カテゴライズされて定着したのか論じている文もあり読み応えがある。ネオ・ダダという言葉までを引き合いに出されていたとは。

左側に写る本が今回の図録。
買うとすぐ読み始めてしまう癖がある。


さぁこの展覧会、福島県を皮切りに2025年度巡回予定が出ている。
お住まいのお近くにきたらぜひ。

巡回予定


北九州市立美術館 2025/5/17〜6/29
山梨県立美術館 2025/7/12〜8/24
富山県美術館  2025/9/6〜10/26
三重県立美術館 2025/11/03〜12/28

福島県立美術館はこんな看板だった。
巡回先にごとに違うのかな。

福島県立美術館 第Ⅲ期コレクション展



さて、もう一つの楽しみと言えば福島県立美術館の所蔵品を見ることである。

エントランスを抜けてホール部分。
何もない空間だけど広い。



その地域出身の画家だったり「お!」という作品と出会えるのが楽しい各地所蔵品展示巡り。

関根正二


最初から衝撃だったのが「関根正二」。
風景画としての良さがあるはずだがタイトルが暗くてそちらにどうしても引っ張られてしまう。「死を思う日」など。
でもなぜか画面から離れられない。

作品すぐ脇にはキャプションのみで解説はないスタイル。
ただ、展示室の隅に解説の書かれたシートがあり、それを手にして読むことができた。

何か、あるぞ

そして、ふと顔を上げると壁面に内線電話っぽい受話器が設置されている。カラオケボックスにある「終了10分前です」電話がかかってくるあの受話器をイメージしてもらえたら。

なんだこの受話器?と思ったら何か書いてある。

「こちらは質問電話です。展示品等に関する観覧者からの質問について学芸員が直接応答しています。
受話器を上げて、通話ボタンを押し『質問をどうぞ』と言われたら話し始めて下さい」

えーー!なんだその衝撃的システム?!?
お、おもしれぇええ!!!
生まれて初めて遭遇したシステムよ?

下記の公式ページの「その他のプログラム」にそっと記載されていた。

展示室は撮影禁止なので、所々にポツンと現れるこの内線電話の様子をお伝えできないのは本当に残念なのだが、ここから電話してたらすごいシュール…かも。
リカちゃん電話ならぬ、学芸員さん電話である。
展示室◯◯思いっきり生電話である。
たとえが古くてすまない。

しかし発見した瞬間もう、好奇心がウズウズしてしまい、いや、まだ観賞途中だしな、と動揺した。
でも内心は
(電話かけてみたい…本当につながるのか…なにか質問したいことはあるか、いや、一度全部見てからにしよう、冷やかしでかけちゃ絶対ダメだ)と逡巡する。

常設展示室だけでもかなりの部屋数があり、どの展示室のテーマもすばらしく、近代日本画、西洋画、工芸、現代美術と続く。

近代の彫刻家、佐藤玄々(さとうげんげん。名前かわいいな)という方の木彫りの動物が良すぎてこちらは絵葉書まで入手。

展示室にあった鶴もよかった。


でもやはり所々に現れる内線電話。
「どうぞお気軽にご質問下さい」「『質問をどうぞ』で話し始めて下さい」
等の記載。

気になりすぎる。

なんとか全部見終えて、さて気になることはあったか、聞きたいことはあったか?と思い返した時、最初に見た関根正二のことが気になり、恐る恐る受話器を手に取ってみたのだ。

通話ボタン ポチッ ツーツー
「はい、学芸員室です質問を、どうぞ!」
「(お、福島訛り…)関根正二についてうかがいたいのですけども…」
「はいはい」
と3点ほど質問をしてみた。
曰く、
「20代で天逝しているので画家としての活動期間は短いが現存している絵画は200点ほどと言われている。
「研究やコレクションの核はここ福島県立美術館が中心を担っている。」
「もちろん、まだ未発見作品もあるかもしれない」
とのこと。
ほんの5分ぐらいの間の出来事だったが、関根正二のことを詳しく伝えてくれて興味深かった。東京だとアーティゾン美術館や東京国立近代美術館、岡山の大原美術館などに作品があるそうだ。
学芸員さんにお礼を言って受話器を戻した。

大っ変満足である。
県民の宝である所蔵品に対して、ただ作品開示するだけではく知的好奇心にもすぐに応えられるようなシステム。今まで20箇所の県立美術館に足を運んでみたけれど、こんなシステムと遭遇したのは初めてだった。
素晴らしいと思う。
忙しい中でイレギュラーに発生する問い合わせに対応するのも大変だと思うけれどぜひ続けていってほしい。

おまけ

知らない街は歩くのが楽しい。

なんで塗ったんだろう。
忙しそうな福島駅前のカワラバト。


ビルの谷間に、駅入り口

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