梧桐で描く
アオギリは実際の木に親しむ前に、俳人の河東碧梧桐でその名を知った。自由律俳句の創始者で、六朝風の書に味があって、人間としては虚子よりも好き。俳号の命名は子規、日頃青白い碧梧桐をからかってのことらしい。その子規だって病弱で夭折した。青瓢箪も青桐もそれぞれにきれいな色合いだけれど。
本物のアオギリは散歩道に何本か立っていて、まず最初に目に止まったのは、枯木に星のなる風景。舟形の実が散った後の黒い五芒星が冬の青空に実によく映える。そこに白い月が来て、白昼に宇宙的恍惚を覚える時がある。
初めてアオギリの筆を使ったのは、アルデバラン食の夜。
詩「星・フラメンコ」
星食を待つ間に、古い詩を葉書に書きつけてみた。筆はアオギリの葉柄。梧桐筆と言えば響きはいいナ。
( Twitter 2016.11.16)
星のなる木がアオギリと知ったのは何年か経ってから。小学校の運動場の隅にケヤキやセンダンなどと並んでいるので、大きく葉を広げるアオギリは毎年バッサリ剪定されて、樹木の風格といったものは無い。それでも幹や枝の骨格はうかがえて、造形的にも面白い木。伝説では鳳凰が休むという。
落ちた葉を拾って、その柄を筆(ペン)にする。大小で太さも違って、軸も手に馴染む。書き味としては上品で鷹揚だろうか。
2017年は元日に、まずアオギリの細いので「鳥」と書いた。次にチョウゲンボウ、さらにキジの羽根で同じく「鳥」。
二日に羅漢寺への往き路で24cmの葉柄を拾い、その夜冒頭の「星の木」やら「獏」の字やらいろいろに遊ばせてもらった。
最後に、誰か皺のある人を描きたくなって、詩人のオーデンを、それからコクトーを描いてみた。アオギリで刻む皺は、柔らかく優しかった。
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星のなる木。