迫真の留学日記67「キングになりたい」

 日付:2024年1月15日(月)
 位置:アメリカ カリフォルニア州(時差-17時間)
 身分:留学生
 天気:晴れ


 登場人物
・緑茶ドラゴン:書いている主、21歳日本人男性


 今日は、キング牧師の日ということで、学校が休みだった。大統領ではなく一人の牧師の誕生日が祝日になるのは非常に面白い。功績を鑑みれば妥当であるが、日本には天皇以外にそういった祝日は存在せず、あるのは○○の日という、休日を設けようという話し合いのもと生まれてきたような休日ばかりしかない。

 むかしベトナムに行った時も、お札のすべての肖像がホーチミンだった時と同じような感覚である。その時に初めてホーチミンに嫉妬した記憶までセットで思い返される。

 そしてここにきてキング牧師に嫉妬してしまった私は、今日は何も予定がなかったので、いつも通りの休日のルーティンを行うことにした。

 まずは朝からバスケをしながら、これから行く図書館で何をしようかを考える。これをすることにより、脳が完全に目覚める気がする。

 しかし今日は、学校のバスケットコートに向かう際、駐車場の車から先生が出てくるのを見たので、こんな休日に何をしているのかということを聞くと、”私は車に住んでいるんだよ”という予想だにしない返答が帰ってきた。

 話に聞くところによると、お金の節約のために車で暮らすことにしたらしい。それが30代くらいのまだ若さの炎を目に宿している人間なら、何か目標のためにやっているんだろうと思ったのだが、50を過ぎているであろう人間が本当にお金を節約するためだけに車で生活しているのには、得体のしれない狂気のようなものを感じてしまう。

 そんな未知の車内を少し案内してもらった。もともとは5人乗りの車の後部座席を取り外してマットレスを引いていた。その上に座椅子を置いて、そこに座るのがいつものセットポジションらしい。

 マットレスの奥には箪笥と冷蔵庫が見えた。冷蔵庫のコンセントは学校に伸びていて、学校からの電力供給を受けていた。

 これが本気の節約術なのかと感銘を受けていたのだが、深堀したところであまり良い終着点に辿り着けなさそうであったため、良い家だねと言ってその場を後にした。

 バスケをした後、図書館に向かたのだが、今日は悲しいかな休館していた。しかし、図書館に職員の人たちも休めていると思うと、その悲しさも薄れていくような気がする。

 そして、バス停に戻ると、私が乗るはずのバスが早めに出発していたため、私はバスと並行して次のバス停まで走った。さすがにバスの方が、荷物を持った人間よりは早く、三バス身差くらいついてしまい、走った努力を、良い運動をしたということで肯定していくようなマインドに切り替え始めていたが、バスの運転手はバスの横を並走するアジア人を認識してくれていたみたいで、私のことを待ってくれた。

 席に着いてからは、久しぶりにあんな距離を全力疾走したせいか、肩で息をし続けていた。これは肩に口が出現して呼吸をし始めたということではないことを注意してもらいたい。

 呼吸が普通に戻った後でも、体が以上に熱く、少し寒気がしてくるほどであった。受験期の時の1500mを走った後に感じた苦痛と似ていた。

 新しい家に不満があるとしたら、執筆できる環境があまりに乏しいことである。今まではルームメイトが就寝しても、リビングで執筆することができたが、今の家ではリビングでホストマザーがソファーで寝ていて、その前を通って机まで行かなくてはいけないので、暗い部屋の中で黙々と作業をしていく必要があり、かつ左側にある扉から入る隙間風が私の体を冷やしている。この家はリピなしである。

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