正常性バイアスとライディングウェア
正常性バイアスというのがあるらしいことはなんとなく知っています。
危険が迫っていても、自分は大丈夫、少々危険があったとしても自分だけは大きな被害には遭わない・・・
そう思ってしまうらしいです。
大きな災害などで逃げ遅れる人の中には少なからず、正常性バイアスの悪戯で不幸なことになる人もいるらしいですね。
バイク乗りの人も様々で
Tシャツ一枚にジーンズだけでツーリングに行く人もいれば、
上から下まで鎧でも装備しているかの如く、体中のありとあらゆる部位を保護していないと気がすまない人もいます。
ヘルメットひとつとっても、数千円の安いもので満足できる人もいれば、
5万円、7万円という高価なヘルメットばかり好む人もいます。
まぁね、いろんな人、いろんなバイク乗りの人がいますけど、
僕自身は、最低限の装備はします。
金銭的にゆとりがあるなら、パンツもジャケットもプロテクター装備の皮製でしっかりしたものにしたいんですけどね、
バイクの維持費でけっこう手一杯。
恥ずかしながらなかなか皮の上下まで揃える余裕がありません。
でも本当は、若い時にプロテクター装備の皮つなぎだったので、やっぱり皮がいいんです。
ウェアが良ければ必ず怪我が防げると言うわけではないんだけど、転倒した時のダメージが全然違うのは確かですね。
ジーンズなんかだと一見強そうに見えるんですけど、転倒するとアスファルトで擦れてボロボロになって、体を保護するなんてことはほぼ無理なんです。
そうそう、正常性バイアスの話に戻りましょう。
僕も例外ではありません。正常性バイアスの働くごく普通の人です。
ツーリングに出かけても、自分が事故を起こすとか怪我をするとかは、
少しも考えちゃぁいません。
教科書通りに正常性バイアスが働いてます。
でもね、それを上回る過去の強い記憶を今でも持っているので、自分の能力の限界値以上で走ったりしませんし、常に余裕を残しておきます。
プロテクターだって装着して出かけるのが普通のことになってるというか、装備しないとなんだか違和感があったり不安なんです。
外出する時にはパジャマで出かける人はいないでしょ?
それと同じ感覚で、とてもシャツ一枚ではバイクに乗ろうと思わないのです。
で、正常性バイアスを上回る強い記憶のこと、そう、経験や見聞きしたそのままが今につながっています。
例えばですけど、
レース中にハイサイドを食らって 空中を5、6メートル飛んだでしょうか。
思いっきりアスファルトに叩きつけられてしまって、体が痛くて動けないし息も
できませんでした。
コース上に倒れたので後続車に轢かれる恐れがありましたが、なにしろ体が動かないので逃げることもできず、チームの連中にコースから引きずり出してもらったくらいです。
それでも、怪我らしい怪我もせずにすんだのは皮つなぎとプロテクターのおかげです。
擦り傷ひとつもありませんでしたから。
皮つなぎの威力は絶大です。
若い時、まだ20代の時に他のバイクと衝突して、一瞬のことなので詳しくはわかりませんが、多分足がバイクとバイクの間に挟まったんですね。
指を一本潰したけど皮のライディングブーツを履いていたおかげで足全体は無事でした。
ブーツは少し形が歪になったのですが、靴底が固かったおかげで指以外の足全体は守られていたんだと思います。
もしスニーカーみたいな靴だったら、指だけですんでいるとは思えなかったですね。
一緒にツーリングした仲間は、バイクじゃなくて車椅子に乗るようになりました。
彼が事故る前に僕は引っ越してしまったのでそれ以降は彼と会えてません。
なので脊髄パッドをしていたかどうかはわからないけど、もししていたら車椅子は必要なかったかもしれないと思っています。
レース中に転倒してバーエンドとアスファルトの間に指を挟んでしまい、その指が皮一枚でかろうじてつながっている人を見ました。
その時、バーエンドの重要性と手袋の重要性が心底理解できました。
これだけじゃないのです、他の記憶も色々あるんです、全部を書かないだけで。
そんなこともあって、自分が事故を起こすとか転倒すると思ってはいないけど、
でも、乗り手がどう思っていようと、乗り手の意思とは関係なしに事故は起きることもよく知っています。
だから当たり前のこととして、最低限の装備だけはするんです。
リターンライダーである僕は、リターンするまでの30年、バイクには指一本触れることもありませんでした。
でも、幸いなことにバイクの乗り方だけじゃなく、バイクが危険と隣り合わせだと言う感覚も忘れてはいませんでした。
僕の考えや感覚を他のバイク乗りに押し付けるつもりは微塵もありません。
バイクに裸で乗ろうがフル装備で乗ろうが本人の自由です。
でも、確実に言えることは、バイクも車も乗り手に対しての忖度なんて完全にゼロです。
乗り手の都合なんて一切考えてはくれません。
唯一自分を守れるものがあるとするなら、乗り手自身の日頃からの意識と行動、それしかないんです。
それを知った上で、自分がどんな風にバイクに乗るかをそれぞれの人が自分で決めれば良いと思います。