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若返った?それは違うな

オートバイのない暮らしが30年以上も続いて
ある日突然、生活の中にオートバイが加わった
そこから若かった日々を思い出し、若い日の時のように
オートバイに乗って走ると、
『俺はまだまだ走れる。若かった時と同じ感触を取り戻した!』
まるで若返ったような錯覚を覚える

若返ってなどいない
10代の時の、20代の時と同じような環境に身を置くことができた
あの時と同じ精神状態になる環境を取り戻すことができた
それだけの事
オートバイに戻ったからと言って、若い時に戻ったわけではないし
僕自身は何も若返ってなどいない

ただひとつ、確かに言えることもある
もしオートバイに戻ることがなかったら、錆びていた心の在り方も
ただのオッサンでしかなかった感覚も
少しかもしれないけれど研ぎ澄ますことができた
赤く錆びたナイフの刃を砥石で磨き
刃の光が戻ってきたと言える
もちろん、若かったあの日の輝きとは違うのだけれど
体中に張り巡らされた何かが
感触を取り戻してきていることは確かだ
だからただのオッサンとは違うという自負はある

柔軟性のない体と蓄えられた体脂肪
なかなかピントの合わない目
疲労から回復するまでに時間がかかる
無理が効かない体力
そんなものどうだっていい、大したことじゃない
モチベーションと言うのか
やる気と言うべきか活力というべきか
気持ちの持ち方の方が何倍も大切だ

老後の年金の心配をしながら老け込んでいく暇があったら
ツーリングに行くための費用を心配する方がいい

衰えている体の心配をする暇があったら
愛車に使うグリースの選択に悩む方がいい

若かりし日の思い出ばかりを楽しむ暇があったら
来週・来月どこへ走りに行くのかを考える方がいい

病気にならないように健康に気を使うことは大切だ
でもべリングの傷み、チェーンの劣化、タイヤの摩耗、ブレーキフルード
エンジンオイルの汚れ、電装系の点検
そっちも健康と同じだけ大切だ、命を乗せて走るのだから

肉体の衰えに逆らおうなんて思わない
でも精神面の劣化とはとことん戦う

ジジイになるのは仕方ない、誰だっていつかはジジイになるんだ
どうせジジイになるのなら
後ろばかり気にするジジイじゃなくて
しっかり前を見て走るジジイの方がいいに決まってる

オートバイに乗っても、少しも若返ってなんかいない
それどころかジジイになった自分に気付かされた
だからこそ
若かった時以上に楽しませてもらう
オートバイを楽しませてもらう
そういうことだ





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