明治19年以前に入籍した妻(婿)の実家の戸籍の請求方法
先祖調査の基本は役所に眠る戸籍の収集です。役所側に自分の直系尊属の戸籍を全て出してほしいと言うと、廃棄の役所に当たらなければ、概ね該当する全系統の明治19年式戸籍まで全て出してもらえます。
役所側がこれ以上の遡りはありません、と通達すると、先祖調査初心者の人は、そうか、これ以上の戸籍は無いのか、と思ってしまうことが多いと思いますが、やり方によっては更に辿ることができるという話をしたいと思います。タイトルにある通り、明治19年以前に入籍した妻(婿)の実家の戸籍の請求です。
①明治19年以後に入籍した妻(婿)の実家の戸籍の請求
まず、こちらはやや簡単です。
八木弥太郎の父方の先祖が判明しました。しかし、母の黒木もとの先祖については分かりません。
なぜなら、もとの事項欄に、
『明治27年、佐賀県佐賀郡新郷村、黒木治兵衛 妹入籍ス』
という欄しかないからです。明治31年以前に入籍の場合、入籍時の実家の戸主、●●の続柄 入籍スという欄しか書かれず、番地も分かりません。
(場合によっては、新郷村、黒木治兵衛妹 亡父、〇〇三女 入籍スのように父情報を加筆している役所もあります。当時の役所の担当者次第です)
仮に私がもとの事項欄を根拠に、
本籍地・・・佐賀県佐賀郡新郷村
戸主・・・黒木治兵衛
で役所に請求すると、高確率で断られます。番地が不明なので、探せません。と言われることでしょう。
ここで旧土地台帳を活用しましょう。旧佐賀県佐賀郡新郷村は、現在の佐賀県佐賀市北川副町大字新郷ですので、佐賀市の管轄する、佐賀地方法務局で旧土地台帳を閲覧し、黒木治兵衛の物で、地目が宅地になっている番地の物を請求します。
そして、無事に黒木治兵衛の番地の物を発見できたとします。番地が分かりましたので、それで請求してみます。
すると、もとさんの兄、黒木治兵衛が戸主で、彼の妹として、もとさんの記載がある戸籍が発行されました。父親は既に亡くなっていますが、母親と祖母の記載欄があり、文化8年まで辿れてしまいましたね。役所の人も、番地が分かったので、すんなりと発行してくれました。こういう感じで、明治19年以後に入籍(嫁に行っている)している妻の実家の戸籍は、割とスムーズに発行されることが多いです。
②明治19年以前入籍の場合(難易度高い)
では、明治19年以前入籍の場合はどうなるのでしょうか。先ほどと同様に、旧土地台帳でもとの兄、黒木治兵衛の番地を発見できたとしましょう。この番地で請求すると、役所から、発行できません、と言われることがあります。なぜか??
役所の人に聞くと、治兵衛の母親、祖母の記載はあるようです。
*ここで、もと(治兵衛)さんの直系尊属の人がいない場合は請求できません。
治兵衛ともとは兄弟なのだから、母と祖母は直系尊属になるはずだから発行してほしいと言っても、治兵衛ともとが本当に兄弟なのか証明することが出来ないので、発行は出来ないと拒み続けます。
なぜここまで拒むのかと言えば、戸主が黒木治兵衛の戸籍には、妹として、「もと」が出てこないためです。なぜなら、明治18年に八木家に嫁に行き、黒木家の戸籍から出ているから。明治19年式戸籍は、明治19年時点で家に残っていた人を書いてあるためです。
要するに、黒木治兵衛という同姓同名の人かもしれないということで、完全に兄弟関係を証明できないという理由です。
対処法
前提として、こういう場合にすんなり出るか出ないかは役所の担当者次第になりますので、交付が不可になる可能性もありますが、少しは交付の可能性を高くするために請求者側も行動する必要があります。
①事前に先祖のデータを集めておく
役所によっては、本当に該当する戸籍が請求者の子孫なのか、確認をしてくる可能性があります。その時に、あー、もとさんの母親の名前は、すんで、天保8年生まれ、大正13年8月1日に亡くなっています。その戸籍が欲しいと言えば、あ、知っているなら、何かしらの系譜資料を持っていて、そう書いてあるからなのかな、じゃあ発行しようという気になることもありますよね。
では系譜資料が無く、請求者側でも分からない場合はどうするのか。お墓を探しましょう。北陸地方(新潟、富山)や沖縄では通用しませんが、たいていは本籍地近くに墓があり、側面に何かしら俗名や没年、享年が掘られています。それで事前に知っておくのです。なぜ知っているのか聞かれたら、言い方悪いですが、前に本家を訪ねたとき、位牌にそう書いてあったからと言ってください。墓とは言ってはダメです。
②同村に同姓同名なんていないと主張する
昔は、現在よりももっと自治体(村)が多かったので、明治19年以前の同じ村で同姓同名なんてまず、ありえません。それを伝えてください。そういえば、分かってくれる担当者もいます。
③同村の戸籍を全て見て同姓同名が居ないことを確認してもらう
上記の方法でも拒まれた場合、役所の人に申し訳ないが、と言った上で、役所側で兄弟であることを証明する必要があるのではないか、これが相続の場合だったら、戸籍の交付を拒み続けるのか、と言ってください。
で、証明の方法ですが、同村の戸籍を全て見て、同姓同名がいると分ったら、交付を拒む対応をするべきなのではないか、それもしないのに拒むのは理由になっていない、と言いましょう。
実際、私も①、②まで主張してもまだ拒み続けた役所があり、③を言ったら、時間かかりましたが、調べてくださり、同姓同名がいないことを確認できたため、戸籍の発行を許可してくれました。
こういったマニアックな方法で、明治19年以前入籍の妻の実家の戸籍を7通も新たに取得しました。日本全国には多くの役所があり、融通の利くところ、利かない所があります。役所担当者が発行できないと言っていたから、取れないではだめです。しっかりともとと繋がる直系尊属がいることが分かったのならば、交付に近づくよう、交渉する必要があります。
今日のお話は以上になります。ご参考になると幸いです。皆さんも頑張ってください。