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本当に母親の実子?

戸籍謄本を見ていると、時々、親子関係に不可解で矛盾した内容が書かれていることがあります。明治19年式戸籍を見る際は、書かれている情報は本当なのか疑いながら見ていく必要もあるというお話をしたいと思います。今回のテーマは、本当に母の実子なのか?です。

1⃣ 戸籍謄本の請求

八木百助(天保9年~明治29年)

ある佐賀県の役所で明治19年式戸籍が取れたとします。この戸籍を読み解くと、八木(旧姓 渡部)百助と佐藤ブンの長男が八木亀吉であることが一目瞭然ですね。

戸主の百助は明治29年に59歳で死去し、長男の亀吉が戸主の戸籍が作られました。以下がこちらです。

八木百助の長男、八木亀吉(慶応3年~大正5年)

これらの情報から、以下に家系図を作成してみます。

八木と名乗ってはいるが、血縁では、渡部家から来てることが推測できた

2⃣ 家系図を通じて親子関係の矛盾を知る

① 年齢差

父、八木百助と長男の亀吉の年齢差は27歳で問題が無いですが、母、佐藤ブンと亀吉の年齢差はたったの13歳です。13歳で本当に生めるのでしょうか。

② 母親の入籍時期に矛盾

ブンの事項欄を見てみると、明治11年、佐藤治助2女 入籍スとあり、長男の亀吉が生まれた慶応元年と次男の雅治が生まれた明治5年時点では八木百助と婚姻していなかったと分かります。婚外子として生んでいた?と言うことでしょうか。

*百助の三男の二之助からは、ブンが入籍した以降に生まれているので、全く矛盾はありません。

3⃣ 矛盾の解決へ

① 亀吉の弟、八木雅治の死亡戸籍(委任状)を取得

亀吉の本籍地が木原村3894番地で、
雅治の本籍地が 〃村3895番地で、隣り合っており、現在も付き合いがあるようですので、雅治の子孫に委任状を書いてもらい、雅治の死亡戸籍を私が代理で取得してみました。すると、雅治の両親欄には、

父 八木百助
母   ヒサ

八木雅治の嫁先にて死亡した戸籍に書かれていた情報

とあり、母に関しては、ブンとは違う名前が書いてあったのです。次男の雅治がヒサの子供ならば、おそらく、兄である亀吉もヒサの子供になるのでしょう。しかし、ヒサは八木家の明治19年式戸籍には出てこないし、なぜかブンという別人が居る…?どういうことだ??

偶然にも、妻の名前もヒサと言うようで、最初、役所で妻の名前を間違えて母名と書き間違えたのかと思っていましたが、下の理由から雅治の母はヒサだと分かりました。

*ここで、母の欄にヒサの旧姓が書いてあれば百助とヒサは婚姻していない状態で雅治を生んだということになりますが、ヒサの旧姓は書かれていないので、百助とヒサは夫婦として雅治を生んだと解釈できます。

② 墓石調査で全てが解決

八木ヒサは、3代百助の娘であり、4代百助の前妻 佐藤ブンは後妻

戸籍からは親子関係が良く分かりませんでしたが、墓石が全ての事実を証明しました。どうやら、3代八木百助は、2女として、八木ヒサを生み、渡部家から婿養子を付けたようでした。4代百助、ヒサの息子として生まれたのが、

亀吉(慶応元年~大正5年) 【ヒサが18歳の子】
雅治(明治5年~昭和20年) 【ヒサが24歳の子】

の2人です。ヒサは明治9年に26歳で死亡し、明治11年に佐藤ブンが後妻に入りました。三男の二之助以降が4代百助とブンの子供になります。

要するに、亀吉と雅治にとって、ブンは継母(血のつながりの無い母)です。なぜ実母のヒサのことが明治19年式戸籍に書かれていないかと言うと、

ヒサは明治19年式戸籍編成前の明治9年に既に亡くなっており、明治19年時点で除籍になっていて書かれなかったから

です。戸籍は当時存命だった人しか書かれません。昔は戸籍編成前に死亡していた母を書く欄は存在しませんでしたので、本来的には亀吉から見たら継母なのに、戸籍には母として書くしかなかったのです。その後、明治31年式戸籍からは両親欄を書く書式に改められました。そこで、ようやく、雅治の母欄から、ヒサという本当の母を知ることが出来たのです。

正しい家系図

勿論、ブンは亀吉と雅治を育てたと思いますので、2人にとっては、お母さんという扱いでしょう。なので、私は継母の家もしっかりと調べて家系図に残しています。しかし、こういった実の母親の情報を知れることって大切なことだと思います。明治19年式戸籍の情報だけを鵜呑みにすると、大切な親子情報を読み間違えてしまうこともあるのです。こういう戸籍は稀に見られます。特に、先祖が明治19年以前に生まれている場合、従前戸籍に出てくる母親は生みの親なのか確認しましょう。戸籍に書かれている情報は本当なのか、お墓や系譜資料と結びつけながら慎重に見ていく必要があると言えますね。今回の話は以上です。皆さんも祖先研究頑張ってください。

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