サッカーに対する価値観
僕の住む地域には沢山の南米圏の人が暮らしている。
それは物心ついた頃からそうだった。小学校も中学校も
1クラスできる位の人が居た。
そんな中で育てば必然と遊びはサッカーになる。家にも遊びに来たことあるし
彼らの家にも行ったこともある。それでも家に居ても結局は一緒に外で
サッカーをしていた。
今は実家を出て少し離れた街で暮らしているが、ここでも周りには南米圏の
外国人が多い。違う街で生活すると知り合いも少なくてサッカーする
場所も知らなければツテもない。しかし、幸いな事に昔から知っている
ブラジル人が居たからブラジル人達が集まるフットサルに呼ばれるようになった。
そして今では、この街で日本人の友人よりブラジル人やペルー人といった
南米の友達のが多くなっている。妻は初め、ビックリしていた。
むしろ笑っていた。いや、衝撃だったのだろう。僕は昔からこのような
環境で暮らしていたから何も感じないけれど、そうでなかった妻は
驚いていた。着信がくればカタカナ表記の名前が出てくる。
LINEの通知を見ればカタカナ表記、ローマ字表記の友人が並んでる。
そりゃ驚く以外ないだろう。。
そして、僕自身学生時代に南米にサッカー留学の経験もあり
その辺も踏まえて親近感を抱いてくれている。
当時僕はまだ15歳だったけど、その時の衝撃は鮮明に覚えている。
まず、サッカーが出来る環境がものすごく多かった。
公園に行けば必ずフットサルコートがある。しかも無料だ。
誰が使ってもいい。昼間は子供たちが。夜は大人たちが。
必ず毎日誰かしら使っていた。夜寝ようとしても外から罵声や怒号
歓喜の声が毎日聞こえてくる。そう。彼らは遊びの中でも本気で
サッカーをしているのだ。シュートなんかも本気で打ってる。
ファールももちろんする。勝つためなら色んなことをしている。
ある日の昼間、障害者施設の人達のレクリエーションでフットサルを
皆でしていた。僕はそこでも衝撃を受けた。彼らもまた健全者と同じように
不自由な事を忘れさせるくらい本気でサッカーをしていた。
僕自身いくつかのグループのサッカーに混ぜてもらったこともあった。
今でも忘れない出来事がある。それは当時15歳の僕の相手は7歳位の
2人組だった。2vs2をする事になり彼らは僕にこう言った。
「サッカー知ってるの?」と。しかも今では国際サッカーでも問題になっている
目をつり上げるジェスチャーをしながら。バカにされていると直ぐに気づき
僕もまだ思春期のクソガキだったのもあり、「とりあえずやろうよ」と
半ば半ギレで答えた。歳下とか子供とか関係なく、サッカーできるのかと
バカにされたことに腹を立てていたから容赦なく点を決めまくった。
すると彼らは僕に、「サッカー上手いじゃんすげーよ」と手の平を返すような
態度で絡んできた。当時の僕はそんな事に目もくれず、最初に言われた事が
ずっと腹立ってたから何も思わなかった。
留学先のクラブチームではプロの下部組織だったのもあり、差別的なことは無く
完全な実力社会だった。オフは皆まだ15歳の子供だから、日本人の僕に
すごく興味を持ってくれてすぐに仲良くなれた。
練習が始まれば皆目の色変えて行っていた。むしろ戦っていた。
この時もまだそこまで僕自身深く彼らの気持ちを考えていなかった。
そんなこんなで留学も終わり日本に帰ってきて今までと同じように
サッカーをしていたけれど、ふと思ったことがあった。
日本って、ぬる過ぎない?と。サッカーがそこにあり、用具がそこにあり
壊れたらまた新しいのが手に入り。トレーニングひとつでも何か物足りない。
だからと言って僕自身何か変化があったかと言うと何も無かった。
その辺の意思の弱さがプロになれず今こうしてダラダラと暮らしている運命なんだと
これを書きながら思っている。
そんな出来事をブラジル人の友達に話すと、みんな口を揃えてこう言う。
日本は選択肢が多いし、何もしなくても普通に暮らせるからねと。
確かにそうかもしれない。明日がないことを考えたことがない。
何気なくサッカーを始めた人も多いだろう。何となく続けてきた人も
多いだろう。でも彼らは生活する為にサッカーを始めたりするらしい。
環境や生活基準が少し違うだけで、こんなにもサッカーは違うものになるのか。
そんな中でやってれば必然と皆も本気でやってた意味を理解できた。
遊びでも戦いならば本気でやる。今の僕はこのブラジル人流のサッカーが
ものすごく楽しい。偏見かもしれないが、日本人同士で遊びで試合をすると
あまりシュートを打たないイメージがある。接触プレーもなるべく避ける
イメージがある。日本人特有の「気を使う」が試合にも現れてるように
感じるのだ。だからすごく僕は面白くない。その反面、彼らは遊びだろうが
本気で戦う。もちろん遊びだから大声で笑ったり疲れたから途中で帰ったり
そんなこともある。でも本気だ。そして僕は今はそのブラジル人達の中でも
一目置かれるようになっている。最初の頃は名前で呼んでもらえなかった。
パスもくれない。空気みたいな扱い。これはよくある話だろう。
でも思い出して欲しい。僕がしてるのは遊びのサッカー。やりたいヤツらが
集まってやってるサッカー。そんな中でも、そんな事が起こる世界だ。
それでも自分の力を出してれば必然と彼らから寄ってきてくれる。
僕の友達の作り方はサッカーをして実力で認めてもらうって方法だ。
そんな事をしてたら、彼らは本当に仲間に入れてくれる。
今では買い物に行ったりBBQをする仲の奴もいる。
日本では考えられないけど、こうして友達を作る方法も面白いものだ。
名前で呼んでくれなかったやつが、いきなり名前で呼んでくれた時の快感は
僕は1番気持ちいい。勝ち誇った感じになる。認められたと。
これだからサッカーは辞められない。
そして今週もまた彼らとサッカーをするんだろう。
ギナギナいきましょ。