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親切は脳に効く

親切が体に良い影響を与えるということが、医学的に説明されるというのはいいことですね。でも、ここで勘違いしちゃいけないのは「親切なふり」ではダメだということです。そう、他人に親切にすることが、自分にとって重荷になるようではいけません。親切にすることが当たり前、日常的なことであるのが大事なのです。 身近な人との良い人間関係、ペットとの心休まる時間も、親切と同じように体にいい影響を与えます。リラックスできる空間、余計なことを考えなくていい時間、そういうものが心に安定をもたらし、体

    • 聖の青春

      聖(さとし)は幼少期にネフローゼ(尿にタンパクがたくさん出てしまうために、血液中のタンパクが減り、その結果むくみが起こる疾患)という大病を抱えてしまったのです。そのため、家にいることより病院で暮らす時間の方が長い生活になってしまいました。そんな彼が将棋と出会ったのは、まるで奇跡のようです。母親に将棋の本を買ってきてもらい、病院のベッドの上でそれをひたすらに読み、勉強する毎日でした。 病気と折り合いを付けながら将棋道場へ通い、力を付けた聖はプロになりたいと思いました。でも体が

      • 図書館への感謝の気持ち

        小学生のころから図書館が大好きなのだけど、大人になってからはちょっと遠ざかっていました。 20年ほど前に図書館に近い所に引越したのをきっかけに、図書館へ足しげく通うようになりました。 図書館はホントにありがたい存在です。タイトルが分かっている本を探しに行くのはモチロン、漠然と本棚を眺めて面白そうな本を探すのも楽しいものです。 大量に本を読むわたしですから、毎回本を買っていたら家中本になっちゃいますから、図書館で借りられるのってとても助かるんです。 図書館だと返すまでの

        • 『運転者』喜多川泰

          修一さんは、保険の外交員です。最近仕事が上手く行かなくなってきて、給与が減るということを奥さんに伝えなければならないけど、「どうしてなの?」と反撃されることが怖くて言えずにいます。このままでは会社にも居づらいし困り果てていました。 そんな彼の前にタクシーが止まりました。そのタクシーに乗ると、そのタクシーの運転手は不思議なほど修一さんのことを知っているのです。そしてこう言うのです。 ネガティブなことばかり考えてしまう修一さんは、このところ心から笑ったことなどありません。それ

          『あのとき売った本、売れた本』小出和代

          著者の小出さんは紀伊國屋書店新宿本店の文芸書売場で25年間働いてこられた方です。書店へ本を買いに来るお客様方、サイン会などのイベントでの著者の方々、実に様々なエピソードがあったのです。 この本は売れる!と思って発注をかけても、タイミングを逸してしまうとなかなか本が届かなかったり、時には同じ書店の別の支店から本を持っていかれてしまったり、書店ならではの面白い話題が満載です。 村上春樹のような著名作家の新作の発売日には、どんなにたくさん本を用意しておいてもドンドン売れてしまい

          『あのとき売った本、売れた本』小出和代

          『藍色ちくちく』 高森美由紀

          刺し子は、布を補強することから始まりましたが、どうせ縫うなら美しい模様にしようと考えた人がいたのでしょうね。幾何学模様が美しい作品を良く目にします。これまで「こぎん刺し」は知っていましたけど、「菱刺し」という刺し子の名をこの本で初めて知りました。 南部菱刺しは平織り麻布の縦の織り目に対し、規則的に偶数の目を数えて刺すことで、横長の菱文様を作り出していきます。 これに対し、奇数の目を数えて刺していくものが、同じ青森県の津軽地方につたわるこぎん刺しです。 この物語は南部に住む

          『藍色ちくちく』 高森美由紀

          『続 窓際のトットちゃん』黒柳徹子

          「窓ぎわのトットちゃん」は、徹子さんが幼少期を過ごした「トモエ学園」での思い出を描いた作品でした。続編であるこの本は、その後の日本が戦争に突入してしまったころの話から始まります。 戦争が激しくなって、お父さんは徴兵されてしまいました。ご近所では疎開する家が増えてきたけれど、黒柳家には疎開する田舎がなく、お母さんは考えました。とにかく東京から逃れなければいけないと。そして北へ向かいました。満員の列車に家族で乗ろうとしたのだけど、徹子さんだけ列車に乗りそこなってしまったのです。

          『続 窓際のトットちゃん』黒柳徹子

          『この世でいちばん大事な「カネ」の話』 西原理恵子

          日本人って、お金のことから逃げている人が多いですよね。何をするにしてもお金がないとどうしよもないことだらけなのに、どうしてそんなに避けたがってるのかなぁ。西原さんは、それじゃダメだ!ってこの本の中で何度も言っています。 親が貧困だと、子どもも貧困になり、その連鎖がずっと続いてしまいます。貧しいと、将来なんか考えたってどうにもならないって諦めの気持ちが先に立ってしい、結果、考えることを放棄してしまいます。将来どころか明日のことすら考えられなくて、ただ生きているだけになってしま

          『この世でいちばん大事な「カネ」の話』 西原理恵子

          『読むとなんだかラクになるがんばらなかった逆偉人伝 日本史編』

          一般的な偉人伝だと、いかにその人が頑張ったのかが大事ですよね。でも、この本で取り上げているのは、まったく逆の生き方をした人達です。本当は将軍なのに、その仕事を誰かに任せてしまったり、仕事の内容にケチをつけられても気にしなかったり、自由に生きた人たちの記録です。 本当は自分がやらなければならない仕事を誰かに泣きついてやってもらったり、部下に投げっぱなしだったりするのって、気の小さい人にはとてもできないことです。ということは、この人たちはかなり神経が太い人、あるいは、そんなこと

          『読むとなんだかラクになるがんばらなかった逆偉人伝 日本史編』

          友達のちょっといい話 4

          学生時代に大工のアルバイトをしていた友達がいました。そこの親方から教わったのが、「大工ってのはな、ダイイチ・ダイニ・・・ダイク」ってなるわけじゃねえんだ。最初はな、「ダイナシ」から始まるんだ。何にもできないどころか、ただの足手まといだ。だから、まずはダイイチをめざせ。」って言われたんですって。 友達は長期の休みの時しかバイトをしてなかったけど、それでも親方から「おまえはダイヨンくらいだな」って言われるくれいになったそうです。 ダイヨンってどのくらいよ?って聞いたら、プレハ

          友達のちょっといい話 4

          友達のちょっといい話 3

          中学校の同級生のチャガノンは、ちょっと訳ありの家の長男です。成人式の朝、スーツを着込んだ彼は家を出ようとしていました。 すると、家の若い衆がやって来て「若旦那、お着物を用意してますんで、着替えてください。」と声を掛けられました。 本当はイヤだったんだけど、銀色の紋付袴に着替えさせられて、成人式会場へと出かけたのです。 会場の公会堂についたのはいいけど、とても憂鬱です。女子は着物でも洋服でもいいけど、男子でスーツじゃないのって僕くらいじゃない。こんな格好で友達に会うのはイヤだ

          友達のちょっといい話 3

          友達のちょっといい話 2

          ヒーちゃんはマーくんのことが大好きでした。でも中学校の3年間、そんなこと一言も言えずにいました。 卒業式の日、ヒーちゃんはちょっと悲しい気持ちでいました。もうマーくんと毎日会うことができなくなってしまうからです。 卒業証書を持って家に帰ろうとしていたら、クラスメートのターくんが「はい、これ」といって学生帽を渡してくれたのです。 「あいつの学生服のボタンは、もう誰かにやっちゃったらしいんでさ、代わりに帽子をもらってきたから」というのです。 ヒーちゃんは、大好きな子の帽子をも

          友達のちょっといい話 2

          『人がつくった川・荒川』長谷川敦

           この本は、今年の青少年読書感想文全国コンクールの今年の課題図書(中学校の部)です。  荒川(荒川放水路)が何故作られたのか?どのように作られたのか?という歴史的なことだけでなく、河川敷は何故あんなにも広いのか? 洪水は雨が降っている間よりも、やんでから起きることが多い、などの話が興味深いのです。 「わたしがこの世を去る時には、生まれた時よりもよりよくして残したい」  という言葉を残したのは、岩淵水門の設計をした青山士(あおやまつかさ)です。彼はパナマ運河の工事に携わり

          『人がつくった川・荒川』長谷川敦

          友達のちょっといい話 1

          わたしの中学時代の友人が九州へお嫁に行きました。義父、義母と若夫婦の4人で暮らすことになりました。 最初の日に、義母さんから「台所のことはあなたに任せたからね」と言われた友人は、家族のご飯を毎日作り続けました。 若いお嫁さんが作る料理にお義父さんは興味津々だったようです。今日作ってくれた料理は何という名前なのかい?としょっちゅう聞いてきたのだそうです。 「青椒肉絲です。」というようにはっきりと名前がついている料理のときはいいのですけど、毎日のおかずですから、単なる「肉野菜炒

          友達のちょっといい話 1

          変わった人が好きなのは?

          ミュージシャンでも、友人でも、わたしは世間でいう所の「変わった人」が大好きなのです。とんでもないことをペロッと言ってしまう人とか、あっと驚くようなことをやってしまう人に惹かれてしまうのです。 そういう人に眉を顰める人もいるけれど、自分に直接被害がない限りいいんじゃないかなぁって思います。 それよりも、自由な考え、自由な行動を見るのが楽しいという方が先に立つから、気にならないのかもしれません。 自分ができないことを、軽々とやってのける人の存在が、わたしを幸せな気持ちにして

          変わった人が好きなのは?

          『百花』川村元気

           泉は就職して、結婚して、もうすぐ父親になります。実家の母のところには余り足を運んでいないのので、久し振りに行ってみると、あんなにきれい好きだった母なのに部屋が荒れている。花瓶の花は枯れたままだし流しには食器が積まれていて、ちょっと変だとは思ったけれど、その時は余り気にしないでいました。でも、母親は少しずつおかしくなっていたのです。  それが認知症のせいだということは分かっていても、あの優しくてしっかりしていた母が少しずつ壊れていくのを、泉は受け入れがたく思っていたのです。

          『百花』川村元気