初めての上京(榮太郎)
初めて上京した。
到着早々お土産を探した。
私の田舎では、遠出の際は必ず手土産持参が慣わしである。
家を出るまでに誰とも出会わない時でも、どこかで誰かが見ているのである。
駅員さんもさりげなく情報を漏らす。
隠し事などできないのである。
御多分に洩れず、私も土産は外せないと信じていた。
かと言って、何が土産に良いか知らない。
列車の中で思い浮かんだのは、「榮太郎飴」である。
祖母が大切そうに「榮太郎飴」の缶をしまっていることを思い出していた。
何とか榮太郎に行けた。
正確には、上品そうなおばあさんの後に続いただけである。
店に入って驚いた。
私の知っている飴以外の商品があった。
私の田舎では、「榮太郎=飴」が成立していたのである。
ところが、飴は榮太郎商品群の一部分なのである。
どれも美味しそうなのである。
田舎の皆を驚かそうと飴以外を購入した。
一週間後、田舎に戻った。
知り合いに手土産を配った。
後日ある人に言われた。
「不味くはないけど...」
この言葉に敵意を持った。
時は流れた。
私は恥ずかしい。
賞味期限切れを配っていた!