違法な融資のあっせん
[要旨]
「融資を受けられる銀行を紹介する」といういわゆる「紹介屋」は違法な融資あっせんをしている人たちであり、そのような人に銀行の紹介を依頼すると、銀行からの信用を失うだけでなく、自社の事業の改善の道を閉ざされることになりかねません。
[本文]
前回、「融資コンサルタント」について触れたのですが、今回は、「融資コンサルタント」にご注意いただきたい点について書きたいと思います。それは、いわゆる「紹介屋」という人たちです。紹介屋とは、融資をしてくれる銀行を紹介し、高額な手数料を請求する人です。「紹介」といっても、一般的な意味での紹介ではなく、「普通なら無理でも、私を通せば必ず融資を受けられる」と触れ回り、融資に困っている会社経営者に言い寄って来るなどの行為を指します。
そのような人たちは、困っている会社の弱みにつけこむだけであり、誘いに応じてはいけません。もし、銀行の紹介の依頼をすると、高額な手数料を請求されるだけでなく、銀行との信頼関係も大きく損ないます。ちなみに、融資を受けたいという会社を銀行に紹介すること、すなわち、融資のあっせんをすることは、違法ではありません。ただし、出資法第5条で、紹介に関する手数料は、あっせんした融資額の5%を上限としています。
また、事業として融資のあっせんをする会社は、貸金業法第2条に規定する貸金業に該当し、同法第3条に基づき、内閣総理大臣(2つ以上の都道府県で事業を営もうとするとき)、または、都道府県知事(ひとつの都道府県で事業を営もうとするとき)に登録をされなければなりません。しかし、違法な紹介屋は、5%を超える手数料を要求し、貸金業としても登録されておらず、また、銀行に融資を依頼するときは、実際とは偽った内容で融資を申請するようです。すなわち、紹介屋は違法な融資を行う、いわゆる闇金業者と同じであり、紹介屋を利用することは会社の事業の改善の道を閉ざすことになりかねませんので、十分に注意してください。
ところで、紹介屋ではなく、いわゆる資金調達コンサルタントが、融資を受けたい会社に代わって銀行と交渉をすることは、弁護士法に違反すると考えている方がいるようですが、これは誤りです。弁護士法第72条に定める非弁行為にあたるのではないかという考え方なのですが、仮に、銀行に、融資を受けたい会社の社長の代理人として弁護士が来ても、銀行は手続きを先に進めません。
なぜなら、銀行職員が社長と会う目的の大部分は、社長に経営能力があるかどうかを見ることであり、代理人弁護士が銀行に来ても、その目的は果たせません。それは、代理人弁護士が、社長の代理人になったからといって、社長に代わって、その会社の経営を行わないことと同じです。一方、資金調達コンサルタントが銀行に出向いて、融資を受けたい会社の要望や理由を代わって説明したり、逆に、銀行の提示する条件を聞き取ったりすることがありますが、それは、法律行為としての金銭消費貸借契約(融資契約)の締結ではありません。それらのやり取りは、融資の承認を得るまでの、準備や地ならしのようなもので、むしろ、専門的知識をもった相手を通して行う方が効率的であると、銀行も考えています。ただし、それらのやり取りを経て、銀行が融資の承認をした後は、銀行が融資契約の締結をするときに、経営者と直接接触し、最終的な融資の条件や、経営者の意思を確認します。これらの確認の相手は、経営者以外には代われる人がいませんし、仮に、代理人弁護士がいたとしても、このことだけに弁護士を代理人にすることはあまり意味がないでしょう。