経営理念は社長の頼もしいパートナー
[要旨]
Bリーグチェアマンの島田慎二さんは、ご自身が会社経営者だった時代は、経営理念を従業員の方に浸透させることに注力していたそうです。そのためには、自分自身が経営理念にそった活動を率先垂範していたそうです。そして、従業員に経営理念が浸透すると、従業員は社長が、都度、指示をしなくても、社長の思いにそった活動をしてくれるようになり、仕事のクオリティが向上するようになるそうです。
[本文]
今回も、Bリーグチェアマンの島田慎二さんのご著書、「オフィスのゴミを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか?」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、2:6:2の法則に関し、どうしても2割の働きの悪い人の発生を防ぐことはできないと考えられがちですが、2:6:2は会社の中の相対的な分類なので、従業員全員の絶対的なスキルアップをすれば、その分だけ業績の改善が期待できるということを説明しました。これに続いて、島田さんは、従業員のスキルアップを図るために、経営理念の浸透が重要であるということについて述べておられます。
「経営理念はあっても、組織に浸透しないというのは、多くの経営者の悩みです。(中略)決めたことを社長が自ら行動で示すこと、その上で、スタッフに言い続けること、これを繰り返すことによって、トップの本気度が心に刺さり、社員は、『お題目』として覚えるのではなく、価値観として感じるようになるのです。(中略)社長の大事な役割は、繰り返し経営理念を語るだけでなく、社員が個々人でもその価値観を行動に落とし込めるう導いてあげることです。(中略)そうしていくうちに、社員が自分の仕事の1つひとるに対して、『これは何のためにやっているものなのか』を自然と考えられるようになる、それが理想のカタチです。
『何のためにやっているのか』を意識できるようになると、仕事のクオリティも大きく変わってきます。計画や実行でミスが生じた時、軌道修正の拠り所になるのは経営理念です。結果を検証する時も、改善策を講じる時も、経営理念に照らし合わせて行います。こうして、すべての社員の意識が、『何のために』に向かうことで、PDCAサイクルの精度が高まっていくのです。経営理念が現場へあまねく浸透していれば、経営理念が社長の代わりに仕事をしてくれます。社長がその場にいなくても、社長の思いにそって現場の仕事は進められるということです。社長の想いが詰まった『経営理念』、これほど頼もしいパートナーはいません」(80ページ)
従業員の方が、心の深いところまで納得して社長と価値観を共有すれば、社長と同じ考え方で活動してもらえるので、事業活動の質が高くなる、そして、従業員の方に価値観を共有してもらうために、社長は率先垂範して経営理念にそった活動をするということは、多くの方が納得できると思います。ところが、これは理解することが簡単ではあるものの、実践することは簡単ではないようです。その理由のひとつは、価値観の共有は、一朝一夕には実現しないため、経営者の方は相当の忍耐力をもって伝え続けなければならないからです。
そして、もうひとつは、経営者自身が、経営理念にそった活動を率先垂範することも、経営者の方に相当の努力が必要となるでしょう。しかし、もし、この難しい仕事を成し遂げたときの効果も、それだけ大きいということになります。なぜなら、従業員の方たちは、社長と同じ価値観で活動する、すなわち、ほぼ、社長の分身になってくれるわけです。しばしば、中小企業経営者の方が、忙しいときに、「この会社にもうひとり自分がいたら、もっと売上をのばせるのに…」ということを口にすることがありますが、まさに、それを実現できるわけです。さらには、会社が社長の分身であふれていると、社長は、普段は何もしなくてすむという理想の状態になります。
そして、もうひとつ大切なことは、現在の強い会社の多くは、経営理念が浸透しているということです。これは、ある意味、当然で、もし、経営理念が浸透していなければ、経営者や幹部が、都度、従業員に指示を出さなければならなくなり、そのような会社は、経営理念が浸透している会社と比較して、事業効率が低いため、競争力も低くなるからです。したがって、これからは、経営者は、どういった事業活動をするのかを考えることよりも、経営理念を浸透させることを最優先しなければならくなっていると、私は考えています。
2023/7/18 No.2407