キャッシュフローの源泉も検討が必要
[要旨]
事業活動においてキャッシュフローを増やすことは大切です。その管理は、主に会計的な観点から行いますが、実務的には、会計的な観点だけでは限界があり、外部環境や内部環境などの環境分析の観点からの検討も必要になります。
[本文]
経営コンサルタントの和仁達也さんのご著書、「お金の流れが一目でわかる! 超★ドンブリ経営のすすめ」を読みました。私も、中小企業経営者の方は、会計について、必ずしも高い専門性を持つ必要はないと考えていますので、和仁さんの言う「ドンブリ経営のすすめ」については、よく理解できます。また、和仁さんの、損益計算書の視覚的な解説は、とても分かりやすいので、会計を苦手にしている経営者の方には、同書をお読みいただくことをお薦めします。
ところで、和仁さんは、キャッシュフロー(CF)を重視しておられる方で、同書でもCFの管理方法が主要なテーマになっています。では、どうやってCFを獲得するかという点については、損益分岐点売上高の考え方を使って管理する手法について、和仁さんは説明しています。ただ、この和仁さんの説明は正しいのですが、少し物足りなさを感じます。
とはいっても、同書の基本的なテーマは会計なので、生産活動や販売活動の観点までは、あえて言及していないのかもしれません。私は、事業は、手もと流動性(すぐに支払いできる現金や預金)がなければ停止してしまうわけですから、CFはとても重要です。そして、CFを増やすには、融資や出資などの財務活動、固定資産の売却などの投資活動と、会社の本来の活動である事業活動によって得られます。
ただし、財務活動と投資活動は、間接的な活動なので、会社のCFは事業活動で得ることが基本です。そこで、事業活動でCFを得る方法は、会計的な側面からだけでは、実務的には不足すると考えられます。具体的には、付加価値を高めるための価値連鎖分析や、競争力を高めるためのSTP分析などから、妥当な戦略を検討することも必要になります。