見出し画像

桶の水の量は最短の板の長さで決まる

[要旨]

桶に水を入れても、桶を構成している板の中に短い板があれば、その板の長さで溜まる水の量が決まってしまいます。会社の経営理念も、これと同様に、多くの従業員が経営理念を理解していても、理解度が低い従業員がいると、その従業員の理解度に応じた効果しか得ることができないので、注意が必要です。

[本文]

今回も、Bリーグチェアマンの島田慎二さんのご著書、「オフィスのゴミを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか?」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、経営理念がつくられていない会社は、従業員の方たちの間で価値観が共有されていないので、PDCAサイクルをまわそうとしても、「P」に疑念を持ってしまい、うまくPDCAサイクルをまわすことができなくなるということを説明しました。これに続いて、島田さんは、経営理念が全社員に浸透することが大切だということを述べておられます。

「経営理念が全社員に浸透することが、会社を成長させることにつながる、この例えとして、私がよく話をするのが、『桶論』です。桶は、板を1枚1枚つなぎ合わせてつくられています。ピントこない人は、五右衛門風呂をイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれません。この桶全体が会社で、板1枚1枚が社員です。桶に水を入れると、水が溜まりますが、この容量が最大化された状態が、いい会社の条件です。ところが、何かのアクシデントで、1枚の板が壊れて半分になったとしましょう。そうすると、その半分になったところから水が外に流れ出てしまいます。どれだけ水を注いでも、その低い板以上に水が溜まることはありません。

つまり、1枚でも板が壊れて低くなると、桶の能力は半減してしまうのです。会社も同じで、1人でも、他と異なる状態になると、会社全体の力が落ちてしまいます。経営理念が浸透していない会社とは、そういうことです。だからこそ、時間がかかっても、全社員に経営理念を浸透させることが必要なのです。特に、1枚壊れたから新しい1枚を、と簡単にはいかない中小企業なら、なおさらです。逆に、全員に浸透している状態をつくれれば、その桶の持つ最大限の能力を発揮できるということです」(73ページ)

島田さんが、この「桶論」で伝えたいことは、制約理論と同じだと思います。制約理論とは、会社の各々の生産工程の生産能力を高めても、結局、最も低い生産工程の生産能力によって、会社全体の生産能力が決まってしまうということです。したがって、経営者の方は、最も生産能力の低い生産工程をみつけて、それを高めることに注力しなければならないということです。

話を経営理念にもどすと、経営理念(または、価値観)がどれくらい浸透しているかということは、なかなか目には見えないので、経営者の方は、全体に浸透しするよう注意しなければならないということです。そのための方法のひとつは、私は、クレドの活用だと考えています。もちろん、クレド以外にも方法はあると思いますが、「経営理念をつくってみたけれど、あまり効果を感じない」と考えている経営者の方は、「桶論」を頭に思い浮かべながら、その浸透のさせ方を改善してみることをお薦めしたいと思います。

2023/7/16 No.2405

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?