経営理念なしにはPDCAはまわらない
[要旨]
Bリーグチェアマンの島田慎二さんは、経営理念のない会社は、PDCAサイクルをうまくまわすことができないと考えているそうです。なぜなら、経営理念がなければ、従業員の方たちは、「P」に疑念を持つことになるからだそうです。したがって、事業を改善するためには、経営理念を会社に浸透させ、価値観を共有することから始める必要があります。
[本文]
今回も、Bリーグチェアマンの島田慎二さんのご著書、「オフィスのゴミを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか?」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、経営理念と経営目標は混同されやすいものですが、経営目標は数値化できるものであり、一方、経営理念は経営目標の上位にある普遍的なものであり、会社の存在意義を示すものということを説明しました。これに続いて、島田さんは、経営理念があることで、PDCAサイクルを円滑にまわすことができるということを説明しています。
「恐らく、PDCAに取り組んだことがないという会社より、PDCAサイクルがうまくまわらないことに悩む経営者の方が多いと思います。千葉ジェッツの場合は、それまでやっていなかったことが幸いしたのか、私が代表取締役に就任してからは、PDCAサイクルが順調にまわっています。(注:島田さんが本を書いていた2018年の時点では、島田さんはBリーグチェアマンに就任しておらず、千葉ジェッツふなばしの社長でした)その最大の理由は、PDCAサイクルをまわす背景に、経営理念があるからです。
『何のために働くのか』=『何のためにPDCAサイクルをまわすのか』という、まわす理由が明確で、その意味を理解しているなら、社員は積極的にPDCAサイクルをまわします。逆に、PDCAサイクルがうまくまわらないのは、PDCAの最初の『P』からして社員に疑念があるからです。その点、千葉ジェッツの場合は、経営理念に基づいて、『P』を策定することで、その後の、『D』→『C』→『A』においても、疑うことなく進めていくことができたと思っています」(61ページ)
島田さんは、「経営理念がなければ、社員は、PDCAの『P』に疑念を持ってしまう」と述べておられます。でも、これは、前回の記事で説明しましたが、経営理念があれば、経営者と従業員の間で価値観を共有できるので、この価値観の共有ができていれば、「P」に疑念を持つことがなくなるという、経営理念を明確にすることの重要な効果のひとつなのだと思います。これを、別の面から説明すると、これも以前の記事で説明した、「3人の石工」の例にもあてはめることができると思います。
すなわち、価値観の共有ができていなければ、1人目の石工のように、「食べるために仕事をしている」としか考えることができないのでしょう。だから、PDCAサイクルをまわしてもらおうとしても、それに積極的に取り組もうとする意欲は持つことはできないでしょう。でも、価値観の共有ができていれば、3人目の石工のように、「後世に残る立派な教会を建てようとしている」と考えることができます。したがって、PDCAサイクルをまわしてもらおうとすれば、それに積極的に取り組もうという意欲を持ってもらうことができるでしょう。
繰り返しになりますが、事業の現場でよくありがちな、「もっと品質を改善しろ」、「原価率をさらに引き下げろ」というような指示を出しても、それは何のために必要なのか、単に、会社のもうけを増やすためだけの活動でしかないと、従業員の方たちに受け止められてしまうと、従業員の方たちは、それらの改善活動を能動的に受け入れてもらえないでしょう。だからこそ、価値観の共有化が大切ということが改めて理解できると思います。
2023/7/15 No.2404