財務指標と非財務指標のバランス
[要旨]
バランススコアカードのバランスの意味としては、財務と非財務、短期と中長期、内部と外部という、多面的にバランスを図ることができるということが考えられます。したがって、BSCによってKPIを設定することは、KPI同士の因果関係を明確にするだけでなく、バランスのとれたKPIを設定することも可能になります。
[本文]
今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、会社の利益の増加のためには、財務面だけでなく、非財務面での改善活動が必要であり、それぞれの活動にKPIを有機的に関連付けてKPIを設定することが効果的ですが、その際、BSCの4つの視点から改善活動を検討することで、各KPIの因果関係を明らかにすることが容易になるということを説明しました。今回は、BSCの「バランス」について説明したいと思います。
「BSCのバランスの意味にはいろいろなものがあると言われている。その中から、意味合いが大きいものをあげてみたい。ひとつは、評価指標として、財務的な指標とともに、財務とは直接関係のない非財務の指標を採用するという、財務指標と非財務指標のバランス。2つめは、4つの視点で戦略目標と評価指標を設定することで、比較的短期的な成果に関係する『財務の視点』と『顧客の視点』、逆に、中長期の成果に関係する『内部ビジネスプロセスの視点』と『学習と成長の視点』の双方が含まれているという意味での、短期と中長期のバランスなどである。
特に、中長期の成果につながる2つの視点が含まれているため、BSCを使った管理は、中長期的に成果を生み出すことにつながり、結果として良好な状態を長い期間にわたって継続できるという面で意味が大きいともいわれている。(中略)また、財務的な成果をしっかりとあげていくことを考えると、評価の比重としては、財務の視点の評価指標の比重を、60%~70%にすることが望ましいという見解もある」(382ページ)
西山教授は、財務と非財務、短期と中長期という、2つのバランスを説明していますが、さらに、株主・銀行(財務)、顧客といった外部との関わりと、内部ビジネスプロセス、学習と成長といった内部との関わりのバランスもあると考えることができます。このように、BSCに基づいた評価指標(KPI)の設定は、因果関係を明確にするほかに、様々なバランスを図ることも可能になるという面で、優れたツールであると、私は考えています。
2022/5/19 No.1982