ABMによるメリハリのある事業運営
[要旨]
ABCに基づいた事業運営管理をABMといいます。一般的には、ABCによる原価計算では、標準品より特注品の方が原価が高くなりますが、特注品の採算が図れるよう、ABMによって、不要な活動を削減したり、活動を共通化するなどの改善を行います。
[本文]
今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、活動基準原価計算(ABC)の導入のデメリットは、アクティビティの設定に労力を要すること、間接費の集計はシステムの導入が必要なこと、正確な原価の算出によって自部門の評価が下がることを懸念する部門は導入に消極的になること、ABCの結果だけで経営判断をすることは適切でないことということを説明しました。
今回は、活動基準管理(Activity Based Management、ABM)について説明します。西山教授によれば、「ABMとは、顧客価値と利益改善のために、ABCの情報を活用する原価の管理の仕組み」です。具体的には、「(1)活動の実行に必要な時間と努力を削減する、(2)不要な活動を削減する、(3)低コストの活動を選択する、(4)可能な限り活動を共通化する、(5)未使用資源を再配置するか、削減する」ということです。
これらをひとことで言えば、ABCを活用して、メリハリのある原価管理によって、効率的な事業運営を行うということです。また、西山教授によれば、一般的に、ABCによって原価計算をすると、標準の製品より、特注品の方が原価が高くなるそうです。このことから、「特注品は採算がとれるような高い価格を設定するか、特注品の種類を絞り込むことで生産効率を高める必要がある」と言えます。
その事例として、「日本の自動車メーカーでは、車体のベースの共通化を図り、見えない部分ではコストを抑える一方で、デザインや内装、性能などは、それぞれの車種や顧客の好みに合わせて変えて行く」という改善策をとっているということです。繰り返しになりますが、このような改善策が実践できるのも、ABCによって、実態にそった原価計算ができるからです。
2022/5/15 No.1978