八十二銀行が長野銀行を子会社に
[要旨]
八十二銀行が長野銀行を子会社にすることにより、長野県の地域銀行は1行になります。その結果、両行の店舗網の合理化は大きく、また、リーディングバンクとしてのイニシアティブも、より大きなものとなります。したがって、地元中小企業は、より銀行と親密な関係づくりが重要です。
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先日、八十二銀行が長野銀行を子会社にするという発表がありました。最近は、地方銀行の再編のニュースは珍しくないのですが、八十二銀行と長野銀行の再編については、地域のリーディングバンクが、同じ地域の2番手銀行を子会社にするという点が特徴だと思います。同様の例は、青森銀行とみちのく銀行、福井銀行と福邦銀行、十八銀行と親和銀行、第四銀行と北越銀行の例があります。かつては、営業地域の異なる銀行での再編(西日本シティ銀行と長崎銀行、常陽銀行と足利銀行、横浜銀行と東日本銀行、肥後銀行と鹿児島銀行)の例が多かったのですが、最近は、同じ地域の銀行での再編が増えているようです。
営業地域が異なる銀行同士の場合、再編前までの競合の度合いが少ないので、再編のための交渉も、比較的行いやすいという面がありますが、重複する店舗網は相対的に少ないので、合理化の効果は限定的になるという特徴があります。一方、同じ地域の銀行同士の再編は、再編前までの競合の度合いが大きく、再編のための交渉も難しい面がありますが、店舗網の重複する部分が多いので、合理化の効果は大きくなります。
さらに、リーディングバンクと2番手銀行の再編の場合、再編後の銀行は、さらに、イニシアティブが強くなります。同じ地域銀行同士の再編でも、地域のリーディングバンクでない銀行同士の再編(三重銀行と第三銀行→三十三銀行、関東つくば銀行と茨城銀行→筑波銀行、八千代銀行と東京都民銀行→きらぼし銀行)は、再編後も、リーディングバンクにはなっていないので、地域でのイニチアティブは高まるものの、リーディングバンクと比較した場合、以前、相対的に低いままとなります。
したがって、八十二銀行が長野銀行を子会社にすることは、店舗網の合理化も大きく、また、地域でのイニシアティブもさらに大きくなるということが予想されます。長野県内の中小企業としては、実質的に、地元の銀行が1行になるため、交渉相手が減り、また、従来よりも銀行の意向に従わなければならないという面が増えると思います。とはいえ、自社の事業改善にひたむきに臨んでいる会社は、再編前も、再編後も、地方銀行はその姿勢を評価することに変わりはないでしょう。
2022/10/11 No.2127