KPIはプロセスの状況を示す指表
[要旨]
KPIは、そのものが直接的な目標ではなく、また、単に重要ということでもなく、目標に関係する重要なプロセスの状況を表すような指標です。そして、それらは事業の内容によって、適切に選定する必要があります。
[本文]
今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、ABCに基づいた事業運営管理をABMといい、これによって、不要な活動を削減したり、活動を共通化するなどの改善が行われるということを説明しました。今回は、KPIについて説明します。
「KPIは、Key Performance Indicatorの頭文字であり、日本語では、重要業績評価指標と呼ばれている。これは、会社の業績目標の達成度合いを評価するための重要な指標のことであり、最近、多くの会社が、業績評価の中で採用するようになっている。具体的には、売上高や営業利益率、ROEといった、業績結果を表す財務指標をKPIとするケースもあるが、実際にはそのような、『財務指標で示された目標を実現するために、重要なプロセスの状況を示す指標』を意味する場合が多い。
例えば、営業分野では、顧客訪問数、見積作成数、受注率、平均受注額、新規顧客獲得数、リピート率、既存顧客売上高増加率、営業担当者ひとりあたり売上高、顧客ひとりあたり売上高などである。これを見てもわかるように、営業分野では、一般に売上高を獲得することが目標になるため、それに関係する重要なプロセスの状況を表すような数値がKPIの候補になる」(359ページ)
西山教授の説明にもあるように、KPIは、単に、重要ということよりも、「目標に関係する重要なプロセスの状況を表すような数値」という役割がポイントです。すなわち、KPIそのものが、直接的に重要なのではなく、最終目標を達成するために注力すべき活動の状況を把握するための指標がKPIということです。例えば、コモディティを販売している事業では、売上高を増やすためには、新規顧客獲得数、客単価、リピート数などがKPIとしてふさわしいでしょう。
一方、買回り品を販売している事業では、顧客シェア、付加価値率、新製品開発数などがKPIとしてふさわしいでしょう。このように、どのように最終的な目標を達成させるかは事業によって異なるため、KPIもそれに合わせて適切なものを設定する必要があります。繰り返しになりますが、KPIは、目標達成のためのプロセスを把握できる指標であること、そして、それらは事業によってふさわしいものが異なるということに留意しなければなりません。
2022/5/16 No.1979
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