見出し画像

手許資金に余裕があるとチャンスが拡大

[要旨]

会社の手許資金は、中小企業の平均では、月商の1.5か月分と言われていますが、2.5か月分以上が望ましいようです。こうすることで、経営者は融資申請の労力を減らすことができたり、ビジネス拡大の機会にも能動的に臨むことができるようになります。しかし、手許資金は、資金管理を行っていないと、なかなか増やすことができません。したがって、会社の競争力を高めるためには、こういった管理能力も重要な要素ということが言えます。

[本文]

今回も、前回に引き続き、税理士の児玉尚彦さんのご著書、「会社のお金はどこへ消えた?-“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。児玉さんは、同書で、手許資金量(児玉さんは、これを「キャッシュポジション」と呼んでいます)は、どれくらいが適切かということについて、述べておられます。「資金繰がいい優良企業の預金残高を見てみると、売上高の2.5か月分以上になっています。手元のお金にかなり余裕があることがわかります。

お金の量に余裕があると何がいいかというと、資金不足を心配する必要がなくなります。本当に預金量が豊富な会社では、日々の資金繰はしていません。半年、1年といった長期の資金計画はもちろん作っていますが、毎月の支払いに関しては、資金繰表を作る必要がないからです。お金に余裕のない会社が、資金繰に追われているときに、お金に余裕がある会社は、新しい手を次々に打てるわけです。お金の余裕度が、社長の心の余裕につながり、社長の時間の使い方まで変えてしまうのです。

ある程度の余裕度を加味してキャッシュポジションを決めておくと、急に商談が舞い込んできたときや、臨時の出費が発生したときに、落ち着いて対応ができるというわけです。私は、毎月、たくさんの社長と会いますが、お金に余裕のある会社では、新規事業や人材採用などの将来のことについての話題が中心です。逆に、余裕の会社は、今日・明日のことしか考えられません。これでは、会社の将来がどうなるかは明らかです。この余裕資金が、資金繰に要する時間を節約させ、突然の資金ショートのリスクを排除してくれるのです」(62ページ)

手許資金量は、会社の資金効率から考えると、無駄な部分は減らすべきと言うことが言えます。しかし、少なすぎても、児玉さんのご指摘の通り、資金調達に労力を奪われてしまうので、リスク管理の観点から、多めに持つことが望ましいと言えます。とはいえ、このことはあまり複雑なことではないにもかかわらず、手許資金を多めに持つことを実践できていない会社は少なくないようです。その理由のひとつは、資金管理を実施していないからだと思います。

これを、別の言い方をすれば、多くの会社は、成行でしか資金管理をしていないということです。例えば、月末の資金不足は、その月の中旬にならないと分からず、ぎりぎりになって銀行に融資申し込みを行うということを繰り返しているため、手許資金もぎりぎりしか持てなくなってしまうということです。でも、正確でなくても、6か月程度のおおまかな資金繰予定表を作成し、融資希望日の1か月前に銀行に融資を申し込めば、時間的に余裕を持って銀行から融資を受けることができます。

このような作業は、最初は、少し手間がかかりますが、長めの資金繰見通しに基づいて融資申込をすれば、繰り返しになりますが、時間的にも金額的にも余裕を持って融資を受けることができるようになります。そうすると、児玉さんのご指摘のように、能動的な事業展開ができるようになり、ライバルとの競争に優位に立つことができるようになります。ライバルとの競争は、営業力や商品力が問われると考えている経営者の方は多いと思いますが、それだけでなく、資金管理能力でも差をつけることができるのです。

2022/12/19 No.2196

いいなと思ったら応援しよう!