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オーナー社長は諫めてくれる人がいない

[要旨]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、サラリーマン、大会社の社長、オーナー会社の社長の中で、裸の王様に最もなりやすい立場にいる人はオーナー会社の社長だということです。そのため、裸の王様になってしまわないよう、自らを厳しく戒めることが大切です。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、根拠のない自信しかないのに、起業して社長に就く人は少なくないものの、それだけでは「社長」のポジションに就いただけであり、その後、事業に臨みながら学び続けなければ、「経営者」としてのスキルを身に着けることができず、その結果、事業をうまく軌道に乗せることができなくなってしまうということについて説明しました。

これに続いて、板坂さんは、中小企業経営者は、「社長の4大疾病」にかかりやすいということについて述べておられます。「『サラリーマンは気楽でええの!』なんてよく言うが、世のサラリーマンの多くは、会社からのデータをもとにした、理詰めの論理で『売上を上げろ!』、『目標を達成しろ!』と言われ、ムチャな上司からは、『どんな些細なことでもホウレンソウだ!』と、パワハラまがいの指示を出され、日々、厳しく追い詰められている。一方、大会社の経営者や役員たちも、悠々としているどころか、株主に見張られ、規模がでかいことで、常に世の中から大きなプレッシャーを受けている。

そう考えると、いちばん気楽な環境にいるのが、中小零細弱小家業の社長たち。毎日のスケジュールも、ある程度、自分の都合で決められる。朝まで飲んだ次の日は、ちょっと遅い出勤にして、家族の記念日には、仕事よりもプライベートを優先させる。お山の大将で責めてくる人がいない分、どんなに自分に厳しくしているつもりでも、気づけばゆるい環境になっているのだ。その結果、本人の中で、『怠慢』、『倣慢』、『自堕落』、『無知』という、4大疾病がむくむくと目を覚ます。

社員が遅刻しようものなら、『お前、なんで遅刻しよるんや、仕事なめとるんか』と傲慢にどやしつけながら、自分が二日酔いの日は、昼から出社してしまう怠慢、自堕落。社員にはきつい期日を切って仕事をさせながら、締め切り通りに上がってきた書類が社長の机の上に溜まっていく。自分の仕事には期日を切らない。それで社員がどんな気持ちになっているのか気づこうともしない無知。社員に、毎日、書かせている日報。あなたはちゃんと読んでいるだろうか。当然、まわりは社長のゆるさを見ているが、何も言わずに陰口を叩き、気づけばお山の大将は裸の王様になっていく」(87ページ)

ここで板坂さんが批判しているような経営者は、私も、かつて、何人か見たことがあります。しかし、世の中の中小企業経営者の大部分は、従業員の方の生活を守るために、早朝から深夜遅くまで、懸命に働いている方がほとんどです。また、経営者の中の大部分は、銀行からの融資を受ける条件として連帯保証人になったり、自宅を担保として提供しています。そういう面では、サラリーマンよりも負担が大きいという面もあります。ただ、サラリーマン、大会社の社長、オーナー会社の社長の中で、裸の王様に最もなりやすい立場にいる人はだれかというと、やはり、オーナー会社の社長だと思います。

これは、オーナー会社の社長に原因があるのではなく、社長=株主であるオーナー会社では、社長に「プレッシャー」をかけてくれる立場の人が最も少ないからです。(むしろ、それが分かっているから、オーナー会社の社長になりたいという人もいるかもしれません)私がこれまでお会いしてきた中小企業経営者(=オーナー会社社長)は、それを理解して、自らを厳しく戒めている方が半数以上です。

ただ、「4大疾病」を患っていないでも、積極的に他者の意見に耳を貸そうとしないオーナー会社社長も少なくないと、私は感じています。では、どうすればよいかというと、1つの方法として、3か月、または、5か月ごとに、試算表をメインバンクに持っていき、自社の業績を報告することです。すぐに効果は表れないかもしれませんが、銀行に業績を報告することを決めれば、仕事に「張り合い」ができるのではないでしょうか?

2024/5/17 No.2711

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