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従業員がマニュアルを作成する効果

[要旨]

職場にマニュアルを導入すると、従業員の活動が受動的になると考えられがちですが、マニュアルの作成を従業員の方に委任すると、自分の提案がマニュアル化されるため、それが動機づけとなって、かえって自主性が生まれます。


[本文]

今回も、ミシュラン一つ星レストランの、ラッセのオーナーシェフの村山太一さんのご著書、「なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?偏差値37のバカが見つけた必勝法」の中から、私が気づきを得たものについてご紹介したいと思います。「サイゼリヤでは、マニュアルが充実しています。マニュアルは『自分の頭で考えなくなる』と言われることも多いけれど、マニュアルは現時点で、最高の作業効率を再現するための説明書なのです。

マニュアルがあるからこそ、サービスのクオリティが安定する。何回も繰り返すから、新たな問題点を発見してアップデートすることもできるし、臨機応変に応用したり、一歩進んだことを率先してやることもできる。そんなマニュアルの絶大な効果を目の当たりにして、『ラッセルでもマニュアルをつくろう』と決めました。ただし、僕がマニュアルをつくってしまったら、意味がありません。

それは僕がスタッフに命じているのと同じことです。(中略)トップが一方的につくったマニュアルは、現場では使いづらくて、たいてい、浸透しないまま終わります。現場の人が気づいたことをマニュアルにした方が、使えるマニュアルになるのです。それに、自分の提案がマニュアルになる方がうれしい。

そこで自主性が生まれるのでしょう。行動を制限するように思えるマニュアルで、むしろ、自分の頭で考えて行動するようになり、想像以上の効果がありました。それに、新人スタッフでも、常連のお客様に対応できるようになったので、自信も生まれ、スタッフは目に見えて成長していきました」(164ページ)

村山さんは、「マニュアルは自走を助けるツール」と述べていますが、村山さんが実感した効果は、私は、マニュアルそのものの効果というよりも、権限委譲の効果だと考えています。同様の効果は、QCサークル(小集団活動)や、5S活動でも見られます。また、これも村山さんが本に書いていますが、マニュアルを作成するには、当然、労力が必要になります。

これは、QCサークルや5S活動も同様であり、直接的な事業活動以外に、活動をすることになります。でも、このような間接的な活動の効果は、その活動のための労力を補うだけでなく、それ以上の効果が得られます。ですから、直接的な事業活動以外は無駄と考えることは望ましくないと言えるでしょう。

もうひとつ付け加えると、村山さんもご指摘しているように、マニュアルを作成するといった改善活動は、「正解」を求めるということよりも、自ら考えるという習慣を身に付けることを目的と考えることが妥当でしょう。このような、「間接的」な活動であるものの、組織としての能力を高めるための活動の大切さ、効果の大きさを、村山さんの本を読んで改めて感じることができました。

2021/10/19 No.1770

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