政策在庫と財庫と罪庫
[要旨]
在庫を持つことは、ビジネスチャンスを増やすことになる、すなわち、財庫ということができますが、それが売れ残ってしまうと、損失、すなわち、罪庫にもなってしまうので、どのような在庫量を持つかをバランスよく判断するところに、経営者の方の能力が問われます。
[本文]
前回は、適切な在庫量は、会社の事業戦略によって決まるということについて説明しました。ところで、これは、会社経営者の方は肌感覚で理解しておられると思いますが、売るもの、すなわち、在庫がなければ、商売そのものができないと感じておられると思います。これは、当たり前すぎることなのですが、事業を開始し、受注をもらおうとしても、それは、手元に売るものがあって、初めてできるわけです。しかも、手元の在庫は、できればたくさんの量(奥行)や種類(幅)があればあるほど、ビジネスチャンスは広がります。そういう意味では、在庫は、財庫であるということができます。
そして、ビジネスチャンスをとらえるために、あえて多くの(または、幅広い)在庫を持つことを、政策在庫といいます。例えば、スーパーマーケットで、暑い日が続くときは、氷菓子を多めに仕入れておくとか、お盆前は、普段は販売していないお供え用の花やお供物を仕入れておくという対応が、これに該当します。繰り返しになりますが、このように在庫を持つことは、収益機会を増やすことになります。
しかしながら、仕入れた商品が売れ残ってしまうと、それは、その在庫は損失、すなわち罪庫になってしまいます。最近は改善しようという動きが見られるようになりましたが、かつては、恵方巻やクリスマスケーキが、立春やクリスマスを過ぎると大量に廃棄され、社会問題になっただけでなく、会社にも大きな損失をもたらすことになっていました。そういう観点からも、在庫を多く、幅広く持つことは収益機会を増やすことになるものの、それが過度になると、逆に、財庫は罪庫になってしまいます。
では、どうすればよいのかというと、それは販売予測という手法を使うことが基本なのですが、最終的には、経営者の方の判断するところとなります。私は、経営者の方の重要な役割はバランスをとることと考えていますが、財庫をできるだけ多くし、罪庫をできるだけ少なくするには、どのような在庫量とすればよいのか、それを適切に判断できるかどうかに、経営者の方の能力が問われることになると考えています。