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裁判で訴えられた会社を銀行は警戒する

[要旨]

銀行にとって、融資をしている会社が裁判に巻き込まれることは、融資取引の懸念材料となるので、融資を受けている会社は、リスクが顕在化する時に備えて、普段から銀行と緊密な接触をしておくことが大切です。


[本文]

池井戸潤さんの小説、「下町ロケット」では、主人公の佃航平が社長を務める、精密機械製造業の佃製作所が、ライバル会社のナカシマ工業から特許侵害で訴えられて、メインバンクの白水銀行から融資を断られてしまうという場面があります。この物語では、ナカシマ工業の訴えは、裁判で勝つことが目的ではなく、佃製作所を窮地に追い込むことが目的の、いいがかり的な訴訟だったわけですが、それでも銀行は、訴えられた会社に対して警戒します。

とはいえ、事業活動を行っていると、意図せず、別の会社などから訴えられてしまうことは、完全に避けることはできません。銀行も、そのような事情は分かっていますが、外見的に、融資をしている会社が裁判に巻き込まれてしまうと、その会社が裁判に敗れてしまったときに備えて、警戒することになります。

そこで、融資を受けている会社側としてはどうすればよいかというと、普段から、銀行に対して、自社の情報を開示しておくことです。他社から訴えられれば、銀行からの印象が悪化することに変わりはありませんが、普段から情報をつかんでいる会社と、数年に1度程度しか接触しておらず、あまり情報がない会社とでは、銀行がその会社に対して抱く懸念の度合いは、まったく変わって来ます。

また、会社は、事業のライバルからだけでなく、元従業員から訴えられるということもあると思います。いわゆる労働訴訟についても、融資をしている銀行としては、懸念材料になります。労働訴訟も、元従業員によるいいがかり的なものもあり、必ずしも会社側に問題があるとは限りませんが、そのように銀行側に認識してもらうには、やはり、普段から銀行とのコミュニケーションが緊密になっていなければ、なかなか、その状況は伝わらないと思います。

このように、銀行にとって、融資をしている会社が裁判に巻き込まれることは、融資取引の懸念材料となります。会社には、さまざまなリスクがあることはここで述べるまでもありませんが、リスクが顕在化する時に備えて、普段から銀行と緊密に接触しておくことは、とても大切です。

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