見出し画像

がんばっているのに報われない理由

[要旨]

営業マンなどは、営業活動をして、すぐに成果を得たいと考えてしまいますが、冷静に考えれば、すぐに成果をえることはできません。したがって、営業活動の視点を変え、将来、たくさんの成果を得るために、早い段階からたくさんの種撒きに注力することが大切です。


[本文]

作家の喜多川泰さんの小説、「運転者」を読みました。同書は、生命保険の営業職の主人公が、不思議なタクシードライバーによって人生が代わっていくという物語です。そして、物語の初めのころに、タクシードライバーは、主人公の岡田に、次のような助言をしています。

「岡田さん、種から野菜を育てたことがりますか?例えば、ニンジンなら、春のまだ暖かくなる少し前に種を植えます。そこから育ててニンジンとして収穫できるのは5か月くらい先です。でも、僕たちは仕事の成果とか努力の成果ということになると、(種を撒いた日に収穫できるという)『バカなこと』を期待していると思いませんか?なかなか結果が出ないと言って苦しんでいるんです 。

人によっては自分は運が悪いとか思い始めます。頑張ってるのに報われないって言う人はみんな、種を蒔いてそれを育てているんですが、ちゃんとした収穫時期の前に『まだ育たない』と言って嘆いているようなもんです。もっと長い目で見たら、報われない努力なんてないんですよ。あまりにも短い期間の努力で結果が出ることを期待しすぎているだけです。今日頑張って明日実になるなんてどんなに早く育つ種でも無理なことですよ」 

この助言は、ほとんどの方がよく理解できると思いますが、岡田のような営業マンの多くは、すぐに結果がでないことに目が向いてしまい、苦しむことになるのだと思います。でも、保険契約に限りませんが、営業マンの都合で契約をしてくれる顧客はほとんどいないわけですから、営業マンとすれば、やれることは、早い時期からたくさんの種を撒くことだけです。この理論は、どんなベテラン営業マンでも受け入れなければならないものなので、考え方を変えるしかないでしょう。というよりも、成績のよい営業マンは、秋の収穫のために春に種を撒くということを実践しているということは、言うまでもありません。

ところで、私は、この部分を読んで、稲盛和夫さんのお話を思い出しました。稲盛さんは、因果応報を説いておられますが、それは、よいことをすれば、必ず、よい結果が得られるということです。ただし、よい結果は、いつ現れるかは、私たちにはわからないともお話しておられます。また、実は、すでによい結果が得られているのに、私たちがそれに気が付かないこともあるともお話しておられます。

このような話をきくと、「それでは、私たちは、がんばってもあまり報われないのではないか」と疑問を持つ方もいると思います。これについて、稲盛さんは、この因果応報は本当に起きているのかを証明することはできないとも述べておられます。しかし、同時に、証明できないからといって、それは信じなくてもよいということにはならないともお話しておられます。

証明できないことであっても、この因果応報を信じることで、自らの願望を成し遂げることができると説いておられます。事実、稲盛さん自身は、因果応報の考え方によって、京セラや第二電電(現在のKDDI)を優良企業に育て、日本航空の経営再建にも成功しています。今回の内容は、非論理的なものでしたが、私は、「運転者」に登場するタクシードライバーや稲盛和夫さんの考え方を信じることにしようと思っています。

2022/2/28 No.1902

いいなと思ったら応援しよう!