融資の小手先の面談テクニックは無意味
[要旨]
銀行に対して融資を申し込むときに、うまく面談できれば融資の承認が得られると考える経営者の方がいるようですが、実際には、財務情報が90%を占めており、面談内容については、あまり審査結果に関係はありません。したがって、円滑に融資を受けようとするときは、普段からの財務内容の改善活動が大切です。
[本文]
先日、地方銀行出身の中小企業診断士の、川北英貴先生が、Twitterに次のような投稿をしておられました。「銀行や日本政策金融公庫との融資交渉において、経営者が銀行等との面談の場で、どのような話をするか、質問にどのように回答するかで、融資の可否が決まると思い込んでいる経営者は多いが、融資の可否の90%は、面談の場以外のこと(決算書・借入返済状況・経営計画等)で決まるのであって、小手先の面談テクニックはない」
私も川北先生のお考えの通りだと思いますし、経営者の方の中にもご賛同される方は多いでしょう。でも、川北先生がご指摘されるような、思い違いをしてる経営者の方も、依然として少なくないようです。そういう経営者の方がいる理由として考えられることのひとつは、経営者自身が、自社の財務情報を見ていなかったり、会計に関する知識が乏しかったりするからではないでしょうか?
そこで、銀行に対する融資交渉も、顧客に対して行う自社商品の販売交渉と同じように、その場の折衝だけでものごとが決まると考えてしまっているからではないかと思います。もし、経営者自身が、自社の財務情報をよく見ていて、その内容を理解していれば、融資の申し込みをするときに、過去、数か年からさかのぼって現状を説明できなければ、銀行は納得しないということを理解できると思います。
でも、経営者が自社の財務諸表を理解できていなければ、そのような方が銀行に対してできることは、「いま、業況回復のためにがんばっています」、「これから、売上を増やすよう努力して行きます」というような姿勢の説明だけになるでしょう。そうであれば、川北先生のご指摘のとおり、そのような経営者は、融資の申し込みについては、銀行職員との面談以外に目は向かないでしょう。
では、経営者に会計的な知識が必要なのかということを問われると、そのとおりではあるのですが、銀行とうまく融資申し込みの説明ができるようにするために、会計的な知識を持つべきだと考えることは、少しおかしな感じがします。なぜならば、裏を返せば、銀行から融資を受けないですむのであれば、経営者は会計的な知識は不要だということになってしまうからです。
確かに、経営者の方が、会計について専門的な知識を持つ必要はないと思いますが、少なくとも、簿記3級程度の知識を持たなければ、融資の交渉の前に、まず、自社の事業の改善に関し、きちんとした判断ができないでしょう。銀行も、このような観点から、小手先のテクニックばかりに頼ろうとする、会計に弱い経営者が経営する会社に対しては、不安を感じることになるでしょう。