見出し画像

新型コロナ対策資本性劣後ローンの特徴

[要旨]

日本政策金融公庫が融資するコロナ対策劣後ローンは、業績不振な会社に対して融資することで、その会社の自己資本比率を高め、他の金融機関からの融資を受けやすくしようとするものです。


[本文]

8月3日から、第二次補正予算に基づく、日本政策金融公庫の、新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(以下、単に「劣後ローン」と記します)の取り扱いが始まりました。これについては、これまで何度か説明して来ましたが、報道機関等があまり言及していない点について説明したいと思います。

ひとつは、劣後ローンの目的です。というのも、劣後ローンの利用ができる会社は、(1)一定の要件を満たしたスタートアップ会社、(2)中小企業再生支援協議会の支援を受けて事業を再生する会社、(3)認定経営革新等支援機関の指導を受けて事業計画を策定し、かつ、民間金融機関等との協調支援により事業の発展、継続を図る会社、です。要は、将来性のあるスタートアップ会社、事業再生をしようとする会社、業績不振の状況から挽回しようとする会社ということです。

そして、このような会社に、「劣後」ローンを融資するのは、劣後ローンそのものによって資金繰を改善するのではなく、劣後ローンによって、実質的な自己資本比率を高めて、他の金融機関からの融資を受けやすくするということです。そのため、前述の(3)では、劣後ローンを受けた後、民間金融機関から融資を受けることが条件になっています。

繰り返しになりますが、劣後ローンは、それによって、直接、資金繰を改善しようとするのではなく、他の金融機関からの融資を引き出すための呼び水として利用されることが前提となっているということです。これは、別の言い方をすれば、劣後ローンを利用しなければ、自己資本比率が低いために、融資を受けにくい会社ということであり、もともと自力で融資を受けられる会社は、劣後ローンを契約する対象と想定されていないということです。

ふたつめの特徴は、融資の条件として、劣後ローン専用の事業計画書を提出することと、毎期の経営状況の報告等を含む特約を締結するということです。これは、コベナンツ(財務制限条項、計画通りに利益率などが達成できなかったときに、利率が引き上げられたり、融資の全額返済を求められたりする契約)ほどの厳しい契約ではないようですが、前もって事業計画を提出し、毎年、達成状況を報告するという契約のようです。

このような契約は、一般的な融資ではあまり行われませんが、劣後ローンは実質的には株式への出資と同等であり、したがって、株主への業績報告と同等のことを求められるものと思われます。これは、ある意味で、劣後ローンを融資する日本政策金融公庫へのコミットメントであり、劣後ローンという強力な支援を受けるにあたっては、当然の契約と言えるでしょう。

なお、ここまでの説明では、劣後ローンの利用は難易度が高いと感じるかもしれませんが、一方で、それだけ強力なツールでもあるといえます。もし、業績が不振であっても、それを挽回するために、安定した資金調達を行いたいという会社は、積極的に劣後ローンを利用することをお薦めします。

いいなと思ったら応援しよう!