輸血より止血が重要
[要旨]
中小企業の事業改善の支援の専門家の方の中には、資金調達の支援のスキルを高めようとする方は少なくありません。しかし、会社にとって、融資を受けることは、事業改善の手段に過ぎないことから、支援する会社が収益性を高めるための活動に軸足を置くことが基本であると言えるでしょう。
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私は、銀行出身の中小企業診断士でもあることから、他の士業の方から、「融資コンサルタント(または財務コンサルタント)になるにはどうすればよいのか」という質問を受けることがあります。このようなご質問に対し、私は、次のように答えています。「中小企業が融資を受けることは大切なことですが、中小企業にとって融資を受けることよりも、利益を獲得することの方が、もっと大切です。
確かに、中小企業が融資を受けることができれば、資金面での課題は解決します。でも、中小企業が利益を得ることができていれば、銀行は進んで融資をしてくれるようになります。したがって、コンサルタントの方が、ご支援している会社の収益力の向上に貢献することで、資金調達の問題だけでなく、会社の体力強化までできることになります」
よく、会社の「かね」は、事業活動にとっての血液に例えられることがありますが、融資を受けることは「輸血」されることに相当し、赤字を黒字にすることは「止血」することに相当します。輸血(融資)がまったく無意味とは言えないまでも、止血(赤字)できていない会社に対して、輸血(融資)をすることは、あまり賢明ではありません。
ところが、輸血は病院(銀行)にしてもらうもので、患者(会社)はなにもする必要がないことから、貧血(資金不足)になると、患者(会社)は輸血(融資)を安易に依頼(融資申請)してしまいがちです。そこで、事業改善の専門家の方たちも、そのような中小企業のニーズに応えようとして、融資コンサルタントや財務コンサルタントのスキルを高めようと考えることは理解できます。
ただし、前述のように、輸血だけでは、会社の真の課題は改善しないので、止血も同時に行わなければ、輸血をしてもらう意味が薄いものとなります。すなわち、輸血(融資)は手段にすぎず、止血(事業の改善)をしなければ、会社の事業は、早晩、行き詰るということに注意しなければなりません。真のコンサルタントであれば、輸血だけを行わず、あわせて止血をすること、というよりも、むしろ、止血のご支援に軸足を置くことが、本当の使命であると、私は考えています。