人生が変わる7つのステップ(1)
[要旨]
経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、起業して社長に就いた方が、経営者としてスキルを高めていくには、事業に対する想いを明文化し、それを社内や社外に定着させていくステップを踏むことが必要いうことです。このステップは、容易なようで、実際には実践されていることは少なく、だからこそこれを実践することで経営者としての成長が期待できます。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、福井県の足場屋の社長さんが、下請けの状態を脱することを決意して、板坂さんのセミナーを受講し、毎日ブログを書き続けた結果、そのブログがよく検索されるようになり、直接仕事を受注できるようになったということがあったそうですが、このように、現状を改善するには、行動力が鍵になるということを説明しました。
これに続いて、板坂さんは、起業して「社長」に就いた人が、「経営者」に変わるための7つのステップについて述べておられます。「金を出せば誰でもなることができる社長から経営者に変わるために必要なのは、あなたが覚悟を決めることだ。そこで(中略)『人生が変わる7つのステップ』を紹介したい。この7つのステップを踏むことで、行動できる経営者として再スタートを切ることができるはずだ。その1つ目のステップは、『熱い想い』。(中略)(板坂さんがセミナーの受講生に)『あなたが商売をしている理由を教えてください』と聞くというのも、実は、7つのステップのうちの1つだ。
『あなたが今の仕事をしているのは、なぜなのか?どうして商いを始めようと思ったのか?』を思い返してみよう。自分の行動の大前提を問い直すことで、心の中にある『熱い想い』が明確に浮かび上がってくる。そうしたら、2つ目のステップ『見える化』に取り組んでいこう。あなたも夜更けの居酒屋で胸のうちにあった『想い』を熱く語っている人を見かけたことがあると思う。たいがい、そういう人たちは話が長い。なぜなら、本人が自分の熱い想い』を『見える化』できていないからだ。2つ目のステップである『見える化』とは、『熱い想い』を短いフレーズにして誰もが見えるようにすることを指している。
例えば、中小零細弱小家業でも経営理念を掲げている会社はたくさんある。『お客様第一主義』などと書いた書を額に入れて、社長室の壁に掲げる。これではダメ。高尚な理念を掲げ、デキる社長になったような気になるだけで、社長自身も口ずさめないはずだ。朝礼で何度も理念とする『想い』を語る。会議でも意見が割れたら、理念に基づいて決断する。これができて初めて『見える化』が実現する。そして、3つ目のステップは『公表』。ことあるごとに、社長自らが、ブログなどを通じて語っていくなど、自らの『想い』を世間に公表していけば、少なくとも社員全員が何も見ずに口ずさめるくらいまで浸透させることができる。すると何が起きるか?4つ目のステップである『共感』が生まれる」(103ページ)
引用した、1つ目から4つ目のステップは、特段、奇抜なものではなく、ほとんどの方が当然のものであると感じていると思います。ところが、ありきたりのプロセスであるために、これで変わることができるのかとも感じると思います。ところが、私がこれまで中小企業経営者の方とお会いして感じることは、ほとんどの経営者の「想い」を持っていいるものの、明文化している方は極めて少ないということです。そのような状態になってしまうのは、中小企業経営者の方(だけとは限りませんが)は、自分が考えていることは、部下たちも理解していると思い込んでいることが多いからだと思います。
もし、部下たちに自分の「想い」が伝わっていないと考えていたら、自ずと明文化をするなどの工夫をしているでしょう。したがって、「想い」を明文化することに効果があるということではなく、明文化されていることは少ないので、明文化されているかどうかが鍵になるということです。このことは、明文化はありきたりに思えるものの、明文化されることは少ないので、ありきたりではないということです。さらに、3つ目のステップである「公表」によって、社外にも熱い想いに共感する人が現れる、すなわち、4つ目のステップに至ります。
ただ、「全社員が何も見ずに『想い』を口ずさめるくらいまで浸透させる」ことは、一朝一夕には実現できません。特に、「会議で意見が割れたら、理念に基づいて決断する」ことを実践することは、難易度は低くないと思います。というのは、経営者の考えよりも理念を上に置くからです。これもありきたりのように思えますが、やはり、実際には、経営者の多くは自分の考えを最優先させたいと考えているからです。ここまで、4つ目までのステップは、思ったよりも難しいということを述べてきましたが、会社組織を成熟させるために重要なプロセスだと、私は考えています。難しいからこそ、スキルアップを目指す経営者として挑む価値があることだと、私は考えています。
2024/5/21 No.2715