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役員貸付金がなぜ計上されるのか

[要旨]

ときどき、会社の決算書に、役員貸付金という科目が計上されることがあります。これは、直接的な役員に対する貸付金として計上されたものではなく、いったん、費用として支出されたものが、事業年度が経過してから、決算処理を行う中で、損金として認められないものを、役員への貸付金として修正されて計上されることによるものが多いようです。

[本文]

先日、中小企業経営者の方から、「貸借対照表に役員貸付金が計上されていることを理由のひとつとして、新たな融資契約に難色を示されたが、役員貸付金を解消するにはどうすればよいのか」という質問を受けたので、その回答について、ここでシェアしたいと思います。まず、回答の前に、役員貸付金とは何かということと、なぜ、役員貸付金が計上されるのかという理由について説明したいと思います。役員貸付金は、その科目名のとおり、会社から役員(社長)への貸付金ということなのですが、多くの場合、直接、会社が社長へ貸付を行ったものではないようです。では、どうやって役員貸付金が計上されるのかというと、社長が取引先の接待でゴルフをしたり、取引先へお土産を購入したりしたときに、その代金を会社から費用として支出したとします。

これらは、どういう相手に、どういう目的で支出したかなどが記録されていれば、税金の計算において、損金として計上できると思われます。しかし、事業年度が過ぎて、税金の申告手続きを行う中で、顧問税理士の方が、ゴルフのプレーフィーや、お菓子の購入代金などについて、目的が不明瞭であり、損金としては認められそうにないものがあると、それは損金(≒費用)として認められないと判断することがあります。(財務会計では、利益=収益-費用という関係になっており、一方、税務会計では、所得=益金-損金という関係になっていますが、それぞれ、利益と所得、収益と益金、費用と損金は、ほぼ同じものです)

そうすると、事業年度の期間中、いったん経理処理では費用として支出したものが、事業年度が経過してから、税金の申告手続きを行う中で、その経理処理が修正されて、役員貸付金として計上されることになります。では、このようなことが起きないようにするためにはどうすればよいのかというと、ひとつめは、損金に認められる支出はどのようなものかを、前もって顧問税理士の方に明確にしてもらい、それに基づいて支出を行うようにすることです。できれば、経理規定として、それを明文化しておくことが望ましいと言えます。

ただ、経営者の方としては、会社のための支出なのだから、損金として認めて欲しいと感じるものであっても、税務会計の観点からは認めてもらえないというものもあると思います。とはいえ、損金として認められ支出を、ある程度の基準以内としておかなければ、税金の計算に不公平が生じてしまうことから、それには従わなければならないでしょう。そして、もうひとつの対策は、毎月、顧問税理士の方に、損金として認められない支出がないか、確認してもらうことです。その結果、損金として認められない支出があった場合、事業年度を過ぎてからよりも適切な修正をできる可能性が高くなります。

2023/9/11 No.2462

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