見出し画像

BSのスリム化はダイエットと同じ

[要旨]

事業活動でキャッシュフローを増やすためには、棚卸資産、売掛金、固定資産などの中身を見極めて、無駄な部分をなくすことが大切です。しかし、そのための管理活動は、ある程度の労力が必要であり、中小企業では継続することはあまり容易ではないことから、3か月ごとに銀行に報告に行くといった仕組みを作るなどして、改善を続けられるようにする工夫が必要でしょう。

[本文]

今回も、前回に引き続き、税理士の児玉尚彦さんのご著書、「会社のお金はどこへ消えた?-“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、融資を円滑に受けられるようにするには、利益目標を設定し、それを管理することで、キャッシュフローを確実に得ることが大切ということを説明しましたが、児玉さんは、さらに、目標達成を確実にするために、自社の状況を定期的に銀行に報告に行くことも大切と述べておられます。

「ある会社では、3か年の中期経営計画を作る際に、バランスシートの改善プランを重要課題に盛り込んでいました。(中略)在庫と売掛金、固定資産のそれぞれについて、毎期の削減目標と対策を明記して取り組んでいます。その結果、現預金以外の資産が着実に減って、利益分と合わせて現預金が増えていきました。さらに、3か月ごとに銀行へその推移を報告して、改善努力を積極的にアピールしています。銀行側も、会社の改善姿勢とその成果をよく評価してくれているようです。

もちろん、銀行のためにバランスシートの改善をしているわけではなく、自分の会社の財務バランスを整えることが本来の目的です。これについて、同社社長は、『銀行へ報告しなければならないから、多少、無理をしてでもやっていますが、社内だけで計画を作っただけだったら、きっと、何も変わっていなかったでしょう』と、言っていました。

社内だけの取組だと、いままで通りでも問題がないので、甘えが出てしまいます。それを、あえて銀行へ報告するというやり方で、会社の財務内容の改善を実現しているわけです。それぐらいしないと、体内に蓄積された内蔵脂肪のような、在庫や売掛金や固定資産を落とすのは難しいということです。会社のバランスシートのスリム化も、ダイエットと同じで、定期的に測定して、他人に見てもらうのが、効果があるようです」(192ページ)

この児玉さんのご指摘は、ほとんどの方がご理解されると思いますが、一方で、「銀行に報告までしなければならないのか」と考える方も多いと思います。事実、中小企業で銀行に実績報告をしている会社(事業再生を行っている会社や、財務制限条項のある融資契約を結んでいる会社は除きます)は、残念ながら、極めて少数です。しかし、これについては、理論よりも感情的な問題だと思います。私自身も、健康的な身体ではないため、本当は、健康管理を行わなければならないことは頭では理解していますが、意思が弱いため、不健康な食生活をなかなかやめることができないでいます。

だからこそ、児玉さんが紹介した会社の事例では、あえて部外者である銀行に報告するという方法で、管理を怠らないような仕組みをとっているのでしょう。したがって、会社の貸借対照表がスリムになるかどうかは、管理をするかしないかの前に、経営者の方の意思の強さが問題になると言うことでしょう。これは、不健康な身体の私自身にもあてはまることであり、児玉さんの本を読んで、自分の意思の弱さを恥じています。

2022/12/30 No.2207

いいなと思ったら応援しよう!