ナンバーワンになるセグメンテーション
[要旨]
自社の製品が、すべての面において日本一になることは、極めて困難です。しかし、自社がナンバーワンになることを基準に、セグメンテーションを行い、その市場で勝負をすることで、優位に競争できるようになります。また、ナンバーワンになることは、自社の認知度を高め、より勝負しやすくなるという効果もあります。
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今回も、前回に引き続き、中小企業診断士の佐藤義典先生のご著書、「図解実戦マーケティング戦略」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、現在はモノが溢れているため、顧客を絞り、その顧客に合わせた商品を販売しないと、他社のと競合で優位にたつことが難しくなっているということを説明しました。佐藤先生は、さらに、自社がナンバーワンになることができるセグメンテーションを選定することが重要と言うことを説明しています。
「では『どのようにセグメントを選ぶか』ですが、セグメントの選定基準は、『自分がナンバーワンになれること』です。あなたがイタリアンレストランを経営しているとしましょう。すべての面で日本一になることは、極めて困難です。しかし、絞り方によっては一番になることができます。例えば、『顧客で絞る→シニア女性間での評価でのナンバーワン』、『商品で絞る→冷製パスタのおいしさのナンバーワン』、『地域で絞る→埼玉県さいたま市でのナンバーワン』などです。これらを組み合わせて、『埼玉県さいたま市のシニア女性での評価ナンバーワン』くらいなら実現できそうではありませんか?(中略)
では、なぜ、ナンバーワンになるべきかという理由ですが、それは、同じ土俵で戦っている場合は、1位の方が、認知度が高くなり。圧倒的に有利だからです。例えば、日本で1番高い山は富士山で、これは小学生でも知っています。では、2番目に高い山は、山梨県にある、標高3,192mの北岳ですが、これを知っている人は圧倒的に少なくなります。このように、1位の会社・商品については、マスコミも取り上げ、ユーザーが口にするなど、認知度が高まり、消費者の頭の中の位置づけの順位も高くなります。(中略)さらに、『1位を選べば安心』という心理も働きます」(53ページ)
このセグメンテーションに関して、成功した事例として私が思い浮かぶのは、ワークマンプラスです。ワークマンプラスは、アウトドアウェア市場には、高機能製品を低価格で販売する会社がないということを発見し、その分野の製品を販売する店として出店し、成功しました。すなわち、競争は、競合相手と比較した相対的な強さで勝負が決まるわけですから、自社が勝てる市場勝負を見つけて、そこで勝負をすれば、自社の絶対的な競争力を高めなくても、優位に競争できるということです。
このように、「自社がナンバーワン」になれるセグメンテーションを行うことは、効果的な手法と言えます。ちなみに、自社がナンバーワンになる市場を発見したからといって、自社の絶対的な競争力はそのままでいいかというと、必ずしもそうとは言えないようです。最初は、相対的に競争力が高かったとしても、徐々に、後から参入してきた会社との差が縮まる可能性があります。したがって、セグメンテーションだけで競争に勝とうとせず、製品や商品そのものの競争力も高めていく、不断の努力も大切と考えることができます。
2023/1/30 No.2238