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BSCの4つの視点に基づくKPI設定

[要旨]

会社の利益の増加のためには、財務面だけでなく、非財務面での改善活動が必要であり、それぞれの活動にKPIを有機的に関連付けてKPIを設定します。その際、BSCの4つの視点から改善活動を検討することで、各KPIの因果関係を明らかにすることが容易になります。

[本文]

今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、KPIに関する注意点として、KPIによる事業の管理では、目的と手段を取り違えないこと、また、最初から、適切なKPIを設定することも難しいので、仮説と検証を繰り返しながら、より適切なKPIを探究していくことが大切ということを説明しました。

今回は、KPIと関わりの深い、バランススコアカード(Balanced Score Card、BSC)について説明します。「BSCは、会社の理念や戦略を出発点として、それを実現するための、具体的な戦略目標を、4つの視点(財務の視点、顧客の視点、内部ビジネスプロセスの視点、学習と成長の視点)と呼ばれる重要な要素ごとに分解して設定していく。その上で、それぞれの戦略目標と関係の深い評価指標を設定して、数値の水準や変化をもとに、理念や戦略の達成状況を管理し、その達成を促進していくものである。(中略)

また、この4つの視点の間には、因果関係がある。具体的には、組織や従業員の状況に関する学習と成長の視点の状況が良好であると、顧客との関係を表す顧客の視点や、社内の業務の状況を表す内部ビジネスプロセスの視点の状況が改善される。また、顧客の視点の状況が良好だと、財務的な目標を表す財務の視点の状況が改善されるというような関係が考えられるのだ」(361ページ)

一般的に、会社の最終的な目標は、利益を獲得することですが、そのためには、財務面だけでなく、非財務面での改善活動も行うことが妥当です。したがって、KPIを活用している会社の場合、財務面と非財務面のそれぞれの活動にKPIが設定されますが、前述のように、それぞれのKPIは有機的に関連することになります。

西山教授は言及していませんが、BSCで業績を改善した、米国のサウスウェスト航空の事例では、「地上クルーのチームワーク向上(学習)」→「実稼働時間の増加(プロセス)」→「定刻離着陸の厳守(顧客)」→「低コストの実現(財務)」→利益の増加という因果関係で、KPIが設定されました。

このような因果関係が明らかになれば、手段と目標の取り違いが起きることを防ぐことができるだけでなく、会社の全体の目標を達成するための、各部署や各従業員の役割が明確になり、より効率的な活動ができるようになります。したがって、もし、KPIを設定しようとするときは、KPIの設定の前に、BSCを導入することが望ましいと、私は考えています。

2022/5/18 No.1981

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