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ストーリーを聞くと顧客から信頼を得る

[要旨]

バリュエンスホールディングスの嵜本さんが、ブランド品買い取りを始めた際、顧客の持ち物に関するストーリーを聞いて、なるべく顧客の要望する価格で買い取りをするようにした結果、リピート客が増え、さらに、顧客からの信頼が得られたり、盗品の買い取りを防ぐことができるようになったなどの副次的な効果を得ることができました。このように、仮説→実践→検証を行うことは、事業の失敗を防ぐだけでなく、新たな収益機会を得ることができるようなります。

[本文]

今回も、前回に引き続き、バリュエンスホールディングス社長の、嵜本晋輔さんのご著書、「戦力外Jリーガー経営で勝ちにいく-新たな未来を切り拓く『前向きな撤退』の力」を読んで、私が気づいがことについて述べたいと思います。前回は、嵜本さんがブランド品買取に注力し始めたとき、買取提示額に納得しない顧客がいることを見て、試験的に顧客に寄り添う価格で買取ることをしてみた結果、リピート客が増加し、その判断はせいこうだったということを説明しました。

これに続いて、なるべく顧客の希望に沿った価格でブランド品を買い取る戦術について、「副産物」が得られたということを、嵜本さんは説明しておられます。「できるだけお客さまの希望に沿った買い取り価格を提示しているうちに、『なんぼや』の特定のコンシェルジュを指名してくれるリピーターの方が徐々に増えてきたのです。そして、この仮説には思わぬ副産物もありました。多くの人がそうだと思いますが、手元にあるブランド品は、思い入れのあるものばかりではありません。

好きなファッションと相性の悪いいただきもののサングラス、あまり好みでない海外土産のスカーフなど、使わないけれど、高額なのは知っているので、捨てられずにいるものは、誰の手元にもあるはずです。こうした品物については、一度、私たちが信頼を勝ち得ることができれば、ストーリーをもつ品物ほど高い金額を提示しなくても、納得して買い取りに応じていただける、ということに気づいたのです。つまり、今度は、お客さまが、こちらの立場を理解してくれた、というわけです。だからこそ、私たちのコンシェルジュは、お客さまに、どんな思い出があるのか、何年くらいお使いのものなのかなどを伺います。(中略)

しかし、こうした話をせず、むしろ、避けたがるお客さまも、中にはいらっしゃいます。そこで、また、私は、さらなる発見をすることになります。(中略)例えば、そこで、お客さまがお話しになったことが真実ではなく、そこに法に触れるような問題があったとします。しかし、そこで、一度のごまかしは利いても、それをストーリーとして、矛盾なく語るとなると、途端に難易度が上がります。だからこそ、ストーリーを伺うと、嘘や矛盾が見えてくることがあるのです」(133ページ)

嵜本さんのリユース品買い取り事業では、当初は、顧客がリユース品に対して持っているストーリーを聞き、できるだけ顧客に寄り添う価格で買い取りに応じることで、リピート客が増加したわけです。さらに、そのことが、会社の信頼を得ることになって、一般的な相場でも買い取りに応じてもらえるようになったり、盗品などを買い取るリスクを防ぐことができだりするという、当初、想定していなかった効果も得ることができました。

この事例から学ぶことができることは、事業の展開にあたって、どのような商品を販売するかを固定的にせずに、仮説→実践→検証を行うことは、失敗を避けることができるというだけでなく、想定していなかった、ビジネスチャンスも発見できるということですう。少し事例は異なりますが、岡山県倉敷市のカモ井加工紙が、マスキングテープの装飾用としての用途を広めたのも、マスキングテープのガイドブックを作るために工場を見学させて欲しいという、女性のユーザーからの依頼があったことがきっかけだったそうです。

この女性は、他の会社数社に見学を依頼したものの、それを断られたそうなので、もし、同社も見学を断っていたら、マスキングテープの新たな用途を見つけることができなかったことになるでしょう。繰り返しになりますが、自社の商品を固定的にせず、仮説→実践→検証を繰り返すことは、失敗を避けるだけでなく、ビジネスチャンスを広げることになります。したがって、事業において、仮説→実践→検証を実践できる体制を整備することは、とても重要です。

2023/7/5 No.2394

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