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事業改善の要因はISO9001取得

[要旨]

枚岡合金工具は、古芝さんが社長に就いてから、5年ぶりに黒字化しましたが、それは、ISO9001の認証を受け、それに基づく工程管理を行うことで、不採算の取引を切り捨てる意思決定ができたことによります。このような、事業の検証と、それによって導き出された改善策の実施が行われなければ、事業は改善しません。

[本文]

今回も、枚岡合金工具社長の古芝さんのご著書、「儲けとツキを呼ぶ『ゴミゼロ化』工場の秘密」を読んで気づいたことについて述べたいと思います。前回は、管理会計により、不採算の注文を切り捨てたことが黒字回復の要因であったことを述べましたが、古芝さんは、管理会計を実施できた要因についても同書で述べておられます。「ところで、このような計算ができたのには理由があります。

注文ごとにバーコードで一元管理を行うようにしていたからです。バーコード管理を始めたのは2001年4月です。コンサルタントの先生に、『ISO9001を取得してみてはどうか』と勧められたのがきっかけでした。ISO9001では、すべての工程の品質を記録することが求められます。これを承認印で行ってみたところ、図面が朱肉で真っ赤に染まってしまったのです。

そこで、紙で管理するのではなく、なんとか電子化できないかと考えました。工程管理に必要な情報は、『いつ』、『誰が』、『どこで』、『なにを』ということと、品質検査の結果だけです。『いつ』という情報は、コンピュータであれば、自動的に記録できます。『誰が』は、名札にバーコードをつけて読み取らせるようにしました。(中略)『なにを』は、図面につけたバーコードで読み取ります。

そして、『どこで』は、バーコードで金型単品ごとの工程表を作成しました。これで、工程が進むたびに、必要な情報が簡単に集まります。(中略)このように書くと、『5年ぶりに黒字回復できたのは、バーコードシステムのおかげじゃないか』と思われるかもしれません。もちろん、利益率を見直す計算の基となったのはこのシステムです。しかし、システムだけでは黒字化しませんでした。

なぜなら、Dレベル、Eレベルの仕事を断っても、生産が注文に追いつかないという状況が解消されたに過ぎないからです。せいぜい、マイナスをゼロにする程度でしょう。ここで、『整頓』で節約できた、1人あたり年間130時間もの余剰時間が利いてきます。この時間を利益率の高い仕事にあてることができ、赤字だった営業利益を黒字化することができました。つまり、『ゴミゼロ化』なくして、黒字化は成し得なかったのです」(69ページ)

管理会計を実施したり、新たなシステムを導入したりしても、そのことは利益に貢献しないと考えている経営者の方は多いと思います。それは事実ですが、前述の古芝さんの説明からもわかる通り、黒字化につながる意思決定は、管理会計の実施や新たなシステム導入があったから行うことができました。管理会計も、システムも、事業改善のための活動のツールに過ぎず、それらを活用した上での経営者の意思決定がなければ、事業は改善しません。

これを言い換えると、PDCAサイクルの「C」(検証)と「A」(改善策実施)が行われなければ、事業は改善しない(赤字が黒字にならない)ということです。すなわち、管理会計やシステムは検証を行うためのツールであり、改善策実施は経営者の意思決定によるものです。経営者の方が事業を改善したいと考えつつも、「P」(計画)と「D」(実行)だけを繰り返し、「C」と「A」を実践していない会社は少なくないと、私は感じています。

2022/8/9 No.2064

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